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2018/12/07

改正水道法の問題点は何か

Tweet ThisSend to Facebook | by suzumura

昨日、衆議院本会議において水道法の一部を改正する法案が自民党、公明党などの賛成多数によって可決、成立しました[1]。


これにより、自治体が水道事業の運営を民間業者に委託するいわゆる「コンセッション」方式の導入が従来よりも容易になる見通しです[2]。


「人口減少に伴う水の需要の減少、水道施設の老朽化、深刻化する人材不足等の水道の直面する課題に対応し、水道の基盤の強化を図る」[3]とされる水道法の改正の問題点についてはすでに本欄の指摘するところです[4], [5]。


実際、民営化された際、非常時に安定した水道供給網の維持が可能なのか、あるいは営利企業が水道事業の運営を担当する場合、水道料金が高騰するのではないか、という点はこれまでも懸念されています[2]。


民営化後に公営に戻されたフランスのパリや再公営化が検討されているイギリスのロンドンの事例などからも、こうした懸念は適切です。


しかも、たとえ2021年度に民間業者への委託を計画する宮城県の村井嘉浩知事が「施設は県が所有し、災害時も県が責任を持って復旧する」と発言し、水道料金が自治体の条例で定められた範囲の中でのみ設定されるとしても[2]、にわかに懸念が払拭されるわけではありません。


何故なら、施設を県が所有するとしても、施設の維持に多額に費用を必要とすることが水道法の改正の主たる理由の一つである以上、県が不断に施設の維持を行わなければ、どれほど「責任を持って復旧する」と表明しても施設が稼働しない可能性が棄却されることはありません。


また、民間業者は慈善事業として水道事業を受託するのではないのですから、高品質で低価格の手法が導入されない限り、あらゆる受託業者は利益を得られる水準まで水道料金を引き上げるか、業務の品質を落として経費を節減することにならざるを得ません。


このとき、水道料金を所定の範囲の中でのみ設定できるとすれば、民間業者は自治体の関係者に陳情して価格帯を引き上げるか、所定の範囲の中で利益を得られる水準まで業務の品質を低下させることでしょう。


以上のよう考えれば、水道事業の民間業者への委託は「水道の直面する課題に対応し、水道の基盤の強化を図る」だけでなく、「水道の基盤の弱体化」をももたらすことが分かります。


それ故に、改められた水道法に基づいて水道事業を民間企業に委託しようとする自治体には、くれぐれも目先の利点に捉われず、長期的な視野に立って事柄の適否を判断することが求められるのです。


[1]議案審議経過情報. 衆議院, 2018年12月6日,
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DC9A96.htm (2018年12月7日閲覧).
[2]水道事業の民間委託 推進. 日本経済新聞, 2018年12月7日朝刊5面.
[3]水道法の一部を改正する法律案の概要. 厚生労働省, 公開日不詳, https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/193-26.pdf (2018年11月28日閲覧).
[4]鈴村裕輔, 水道法改正を巡る議論で不可欠な視点は何か. 2018年7月6日, https://researchmap.jp/joai5zb7n-18602/.
[5]鈴村裕輔, 再び水道法改正を懸念する. 2018年11月28日, https://researchmap.jp/jot9i44us-18602/#_18602.


<Executive Summary>
Is Revised Water Supply Act Our Beneficial Law? (Yusuke Suzumura)


Revised Water Supply Act has passed at the House of Representatives and enacted on 6th December 2018. In this occasion, we examine meaning and problems of the revised law.


 


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