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2019/01/11

「元徴用工訴訟問題」で文在寅大統領は現実主義者となれるか

Tweet ThisSend to Facebook | by suzumura

昨日、韓国の文在寅大統領が2019年の年頭の記者会見を行い、北朝鮮問題の進展や経済の発展などについて演説しました[1]。


さらに、演説後の記者団との質疑応答の中で、文大統領は昨年10月に韓国の大法院が新日鉄住金に対していわゆる元徴用工への賠償を命じる判決を下した問題について、日本政府が政治問題化することを「賢明ではない動き」と指摘するとともに、韓国政府は三権分立を尊重していると発言し、大法院の判決に対して行政府が干渉しない態度を示唆しました[2]。


経済成長の鈍化や北朝鮮との南北対話に対する国民の支持の鎮静化、さらに昨年12月に一部の世論調査で政権発足以来初めて不支持が支持を上回るなど、文政権を取り巻く環境は険しさを増しています[3]。


また、3月1日(金)に1919年3月1日に当時の京城で日本からの独立を求める運動が起きた三・一独立運動から100周年、10月26日(土)に安重根がハルピン駅で伊藤博文を暗殺してから110周年目を迎えるなど、韓国では国民意識の高揚が予想される出来事が控えています。


そのような中で、文大統領には政権の求心力を維持するためにも元徴用工訴訟の問題で日本に譲歩する余地がないことは明らかです。


一方、日本国内でも与党の自民党内で駐韓大使の一時帰国や韓国の在日資産の凍結、輸入関税の引き上げなどを求める声が起きており[4]、早期に事態を打開することは困難になりつつあります。


幸い、政府間での対立に比べ、民間同士は比較的冷静な対応をしています。


しかし、韓国の歴代政権が日韓基本条約によって解決済みとの立場を示してきた元徴用工への賠償金支払問題が再燃したことを嫌気する日本企業が韓国での事業を縮小擦る可能性が高まります。


実際、日本にとって韓国は第3位の、韓国にとって日本は第3位の貿易相手国であり、日本側統計では2016年の対韓投資額は12.5億ドルで、韓国にとって日本は第6位の投資国です[5]。


新年記者会見で経済を重視した政権運営の見通しを示した文大統領にとって、日本との経済上の関係が停滞することは好ましくありません。それにもかかわらず、文大統領は記者会見の中で日本との経済関係に配慮する姿勢を示しませんでした。


しかも、現在、日韓両国には、日本海を航行中の韓国海軍の駆逐艦広開土大王が、海上自衛隊のP-1哨戒機に対して火器管制レーダーを照射した「日韓レーダー照射問題」が未解決のままです。


もちろん、水面下で両国が実務者による協議を重ね、これらの問題の解決に向けた努力を行っている可能性は大いにあり得ますし、文大統領の強気の発言は、あえて強硬な態度を維持することで日本側と妥協する際に「大幅な譲歩をした」と貸しを作るための複線かも知れません。


それでも、目分量を測り間違え、実現が難しいとされる韓国の在日資産の凍結や輸入関税の引き上げなどを日本政府が実行に移す可能性は皆無ではありません。


それだけに、少なくとも元徴用工訴訟の問題にいては、三権分立の原則を尊重しつつ、日韓関係のみならず韓国経済の問題という点からも、文大統領には大局的、現実主義的な見地に基づいた対応が期待されるところです。


[1]Opening Remarks by President Moon Jae-in at New Year Press Conference. 10th January 2019, The Republic of Korea Cheong Wa Dae, http://english1.president.go.kr/BriefingSpeeches/Speeches/106 (accessed on 11th January 2019).
[2]South Korean President Moon Jae-in accuses Japan of politicizing wartime labor issue. The Japan Times, electronic version, 10th January 2019, https://www.japantimes.co.jp/news/2019/01/10/national/politics-diplomacy/south-korean-president-moon-jae-accuses-japan-politicizing-wartime-labor-issue/#.XDgo5OR7nIU (accessed on 11th January 2019).
[3]経済運営 文氏なお強気. 日本経済新聞, 2019年1月11日朝刊9面.
[4]日本、強硬論強まる. 日本経済新聞, 2019年1月11日朝刊3面.
[5]大韓民国基礎データ. 外務省, 2018年3月27日, https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/korea/data.html (2019年1月11日閲覧).


<Executive Summary>
Will President Moon Be the Realist against the "Wartime Labour Issue"? (Yusuke Suzumura)


President Moon Jae-in of the Republic of Korea held the New Year Press Conference and blamed attitude of the Japanese Government on the "Wartime Labour Issue" on 10th January 2019. It might not be adequate not only for President Moon but also Korean economics, since Japan is one of the important economic partner for Korea and President Moon emphasises to promote economic growth of the nation.


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