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2019/05/23

「首相辞任」は「英国のEU残留」に向けたメイ首相の最後の賭けである

Tweet ThisSend to Facebook | by suzumura

英国のテリーザ・メイ首相が5月24日(金)に辞任を表明する見通しとなりました[1]。


欧州連合(EU)からの離脱を実現できず、離脱の是非について民意を問う2度目の国民投票の可能性に言及するなど、与党保守党や閣内から辞任を求める声が高まり、政権の議会運営を担ってきたアンドレア・レッドサム氏も「支えられない」[2]と5月22日(水)に下院院内総務を辞任しており、メイ氏を取り巻く環境は厳しさを増していました。


特に、2016年にメイ氏と保守党党首選挙を争い、党内有数の実力者であるレッドサム氏が「国家、政府、われらの党の利益んために適切な決断を行うことを切に願います」と辞任を促す書簡を送ったこと[1]が、党内の求心力が低下していたメイ氏にとって決定的な痛手となったことは容易に推察されます。


しかも、昨年12月に保守党の信任投票によって過半数の支持を得たメイ氏は、党の規定によって今年12月まで信任投票を行えないため[2]、党内の「反メイ」の動きを封じる効果的な手段を持っていないのが実情です。


それだけに、現地時間の3月27日(水)に英国とEUの間で合意した離脱案を議会が承認した場合に辞任する意向を示したメイ氏[3]が、辞任の時期を早めたことになると言えるでしょう。


今後は、メイ氏の後任となる党首選びが保守党内で行われることになります。


党首選では、すでに出馬の意向を示している離脱強硬派のボリス・ジョンソン前外相[4]やドミニク・ラーブ前欧州連合離脱相を中心に、離脱強硬派が優勢を占める見通しです[5]。


確かに、EUからの早期の離脱を実現できなかったメイ氏の後継者を選ぶのですから、合意の有無を問わずEUからの離脱を進めようとする人物が与党の党首に選ばれ、首相として「ブレグジット」を進めるようとしても不思議ではありません。


しかし、保守党の中にもEU残留派がおり、最大野党の労働党もEUへの残留を主張している現状では、EUからの離脱を強行することは容易ではありません。


また、ロリー・スチュアート国際開発相のようなEU残留派[5]が政権を担当するとしても、離脱派の協力を得ることは難しいところです。


従って、誰がメイ氏の跡を継ぐとしても議会とEUの双方を納得させる結論を早期に導くことは現実的ではありません。


それでも、EU残留派であったメイ氏がデイヴィッド・キャメロン首相の後継者となってから積極的にEUからの離脱を進めたように、新首相の最有力候補であり、大衆迎合主義者とも目されるジョンソン氏が首相となり、EUからの離脱を拒む世論に応じてEUへの残留を決める可能性も皆無ではないと言えます。


もしそうなれば、メイ氏は首相の座と自らの名声と引き換えに英国のEUへの残留を実現するという困難な課題を達成することになります。


その意味でも、今後の保守党の党首選と、新首相の動向が大いに注目されるところです。


[1]Theresa May set to announce resignation on Friday amid angry Tory backlash. Mirror, 23rd May 2019, https://www.mirror.co.uk/news/politics/theresa-set-name-departure-date-16187191 (accessed on 23rd May 2019).
[2]Theresa May faces pressure after Andrea Leadsom resigns. BBC NEWS, 23rd May 2019, https://www.bbc.com/news/uk-politics-48374841 (accessed on 23rd May 2019).
[3]英、3月末離脱は回避. 日本経済新聞, 2019年3月28日夕刊1面.
[4]Why Andrea Leadsom had to distance herself from Theresa May's deal to have a shot at the leadership. Independent, 23rd May 2019, https://www.independent.co.uk/voices/andrea-leadsom-resign-brexit-theresa-may-conservative-party-leader-a8926296.html (accessed on 23rd May 2019).
[5]Who is favourite to replace Theresa May as UK prime minister?. euronews, 17th May 2019, https://www.euronews.com/2019/05/17/who-is-favourite-to-replace-theresa-may-as-uk-prime-minister (accessed on 23rd May 2019).


<Executive Summary>
Is It the Last Gamble by Mrs. Theresa May? (Yusuke Suzumura)


British Prime Minister Theresa May set to announce resignation on 24th May 2019. It might be the last gamble by Mrs. May to fight fire with fire for Brexit.


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