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2019/07/22

カゼクサの黒穂病菌と担子菌酵母の関係

Tweet ThisSend to Facebook | by Aciculo
これはカゼクサというイネ科植物に寄生する黒穂病菌です。緑色のブドウの実のような部分を割ると黒い粉がでてきます。この菌の学名はMacalpinomyces spermophorusといい、近所で見つけたので、たまたま黒穂胞子を発芽させてみたところ酵母状に生育しました。



そこで、DNAの塩基配列を調べたところ、担子菌酵母の一種のPseudozyma tsukubaensisのものと一致しました。この担子菌酵母は野外の様々なところから分離されており、虫歯にならない甘味料のエリスリトールを効率よく作る菌として知られています。

つまり、カゼクサの黒穂菌の無性世代に別の学名がつけられていたと考えると辻褄があいました。一つの菌類の異なる世代に別々の学名がある状態は以前の命名規約では問題なかったのですが、現在の命名規約では一つにすることが求められています。

この菌の場合、それぞれ別々の基準で学名が記載されていました。すなわち、黒穂病菌は植物病理学や菌学の系譜で宿主植物や黒穂胞子の形態をもとに種名が記載され、担子菌酵母は農芸化学の系譜でその炭素源の資化能などをもとに種名が記載されていました。

このため、単純に記載内容を比較できないため、DNAの塩基配列が同じだからといって同一種と判断することもできません。そこで、カゼクサの黒穂病菌の生活環のうち有性世代の形態と無性世代の資化能などを調べて、それぞれの記載文の内容と比較して同一種とみなせれば、M. spermophorusP. tsukubaensisが同一種とはっきり言えることになります。

ちょっと考えてみたところ、こんなことをやろうとするのは世界中に私ぐらいしかいなさそうだったので、この研究をすることにしました。さらに、エリスリトールの産生能を糖類の専門家の本多裕司先生に調べてもらって論文にしました。

この研究は私の想定以上に評価されて、光栄なことに日本菌学会の論文賞である平塚賞を受賞しました。

Eiji Tanaka, Yuji Honda. 2017. Teleomorph–anamorph connection of Macalpinomyces spermophorus with Pseudozyma tsukubaensis and corresponding erythritol production. Mycoscience. 58: 445–451. https://doi.org/10.1016/j.myc.2017.06.006



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