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2019/08/16

今上陛下の「初めての終戦の日のお言葉」はいかなる意味を持つか

Tweet ThisSend to Facebook | by suzumura

昨日、1945(昭和20)年8月15日(水)に大日本帝国がいわゆるポツダム宣言を受諾したことが詔勅によって国民に告げてから74年目を迎えるに当たり、日本武道館において全国戦没者追悼式が行われました。


今年5月1日(水)に登極された今上陛下は皇后陛下とともに式典に行幸され、参列者に以下のようなお言葉をたまわりました[1]。


本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
終戦以来74年,人々のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,多くの苦難に満ちた国民の歩みを思うとき,誠に感慨深いものがあります。
戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ,ここに過去を顧み,深い反省の上に立って,再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,全国民と共に,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。


今上陛下の「かけがえのない命」や「深い悲しみ」、あるいは「戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ」という表現は、上皇陛下にとって最後となった全国戦没者追悼式での最後のお言葉[2]と同じです。


このような表現における連続性は、今上陛下が、上皇陛下が取り組んできた「平和の象徴としての天皇」という像の確立と発展の試みを継承していることを示唆します。


さらに、「現人神」として大東亜戦争の開戦の詔書を渙発した昭和天皇、「日嗣皇子」[3]として戦時下の国威発揚の一翼を担った上皇陛下[4]に対する、今上陛下の特殊な位置も考慮する必要があります。


すなわち、大東亜戦争の終結から15年を経ようとする1960年2月23日にお生まれになった今上陛下にとって、全国戦没者追悼式とは自らは直接関わることはないものの、国民統合の象徴としての天皇が継承すべき事柄であり、実体験ではなく追体験的に往時に思いを致さねばならないのです。


このような今上陛下と大東亜戦争との関係は、陛下が新たな反省のあり方を示そうとされていることをわれわれに伝えます。


上皇陛下が「深い反省とともに」と自らの反省の意を示したのに対し[2]、今上陛下が「深い反省の上に立って」と過去に今上陛下、さらに昭和天皇が行ってきた反省を踏まえていることなどは、今上陛下の取り組みの一端を示していると言えるでしょう。


大東亜戦争を実際に体験した人々が日本の総人口に占める割合が少数派となった現在、今上陛下のお言葉は、記憶の風化という人間に生じる当然の作用に基づき、新たな一歩を踏み出したと考えることが出来るでしょう。


[1]全国戦没者追悼式 令和元年8月15日(木)(日本武道館). 宮内庁, 2019年8月15日,http://www.kunaicho.go.jp/page/okotoba/detail/48#184 (2019年8月16日閲覧).
[2]全国戦没者追悼式 平成30年8月15日(水)(日本武道館). 宮内庁, 2018年8月15日, http://www.kunaicho.go.jp/page/okotoba/detail/30#130 (2018年8月16日閲覧).
[3]皇統譜に燦然輝く日嗣皇子の御名 きょう厳かに御命名式. 東京朝日新聞, 1933年12月29日朝刊11面.
[4]大元帥陛下民一億を御親率. 朝日新聞, 1943年1月1日朝刊1面.


<Executive Summary>
What Is the Meaning of the Address by His Majesty the Emperor on the Occasion of the Memorial Ceremony for the War Dead of 2019? (Yusuke Suzumura)


Emperor Naruhito made his first address for the Memorial Ceremony for the War Dead on 15th August 2019. It might be very remarkable address, since it shows Emperor Naruhito continues to hope for peace.


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