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2019/08/19

「香港デモ」はいかなる終わりを迎えるか

Tweet ThisSend to Facebook | by suzumura

2019年逃亡犯条例改正案、いわゆる逃亡犯条例を契機とする香港の抗議活動は、今年6月9日(日)から11週目に入った現在も終息の兆しが見えません。


昨日は、警察による暴力行為の検証などを求める抗議集会が開かれ、主催者の発表によれば170万人が参加したとのことです[1]。


1997年7月1日に香港が99年の租借期間を経て英国から中国に返還された際、中国政府は香港に対して、2047年までの50年間は高度な自治や言論の自由を保障する「一国二制度」を認めたことは周知の通りです。


しかし、2014年に行政長官選挙の民主化を求める市民や学生らが大規模な抗議運動を行ったいわゆる雨傘運動の際に、中国政府は一切の妥協を拒否し、2016年の香港立法会選挙で当選した、独立を志向する民主派議員の資格を次々と剥奪するなど、2012年に発足した習近平政権は、中国に盾突く勢力を絶対に許さない姿勢を鮮明に示していると言えます[2]。


このような習近平政権の態度は「一国二制度」のうち、「二制度」ではなく「一国」を重視するかのようであり、香港を強圧的に統治しようとする中国の習近平政権に対する市民の積年の不信が、今回の抗議活動の勢いを維持していると考えられます。


その一方で、香港返還から既に22年が経過している現在、中国政府が「50年後」を見据えて「一国一制度」への準備を行いつつあるとしても、何ら不思議ではありません。


特に、米中貿易摩擦に伴う今後の経済状況の悪化が予測される中で、若年層の経済的な不満を取り除くことが政権の求心力を保つ上で重要になっている中国政府[3]にとって、民主化運動の主たる担い手が若年層である香港の様子が懸念すべき事態であることは容易に推察されます。


また、1994年5月に当時の中国政府・香港マカオ弁公室主任の魯平氏が香港の基本法に定められている50年の保証期間を超えても「一国二制度」の原則が変わらないとの考えを示す一方で「中国にとっての香港の価値はあくまで経済的なものであって、大陸への政治的圧力をかけるための拠点として利用されるならば、悲惨なことになろう」と指摘し、香港の民主化促進問題などで対中批判を強める域内の民主派団体などを牽制したこと[4]も見逃せません。


その意味で、香港の抗議運動に対する中国政府の強硬とも称されるべき対応は、一面において若年層への警戒心を示し、他面において「一国一制度」へと収斂する「50年後」への布石であると言えるかも知れません。


しかし、現時点で中国政府が「一国二制度」を揺るがすような態度を示すことには各国が反対ないし消極的な立場を示しており、米国のドナルド・トランプ大統領も1989年の天安門事件のように中国政府が抗議運動を実力で制圧することが米中関係に深刻な影響を与える旨を警告しています[5]。


それだけに、今後、いかにして中国政府の面目を保ちつつ抗議運動を平和裏に解決させるかが、国際社会にとって重要な問題となることでしょう。


[1]香港デモ 勢い衰えず. 日本経済新聞, 2019年8月19日朝刊1面.
[2]香港デモ 習政権の誤算. 日本経済新聞, 2019年6月18日朝刊3面.
[3]若者対策、日本に学ぶ中国. 日本経済新聞, 2019年8月11日朝刊5面.
[4]香港の1国2制度 中国「50年以上続く」. 日本経済新聞, 1994年5月7日朝刊6面.
[5]'Tiananmen Square' crackdown in Hong Kong would harm trade deal: Trump. YAHOO! NEWS, 19th August 2019, https://news.yahoo.com/tiananmen-square-crackdown-hong-kong-harm-trade-deal-225734938.html;_ylt=AwrC1Ckj3lldbTQAhgTQtDMD;_ylu=X3oDMTEyODAwZXF2BGNvbG8DYmYxBHBvcwMxBHZ0aWQDQjc1MDZfMQRzZWMDc3I- (accessed on 19th August 2019).


<Executive Summary>
What Is the Future of the Hong Kong Pro-Democracy Movement? (Yusuke Suzumura)


The Hong Kong Pro-Democracy Movement holds a large scaled demonstrations at the central area of Hong Kong on 18th August 2019. It might be very important for international society to harmonise the conflict between the movement and the Central Government of China peacefully.


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