カウンタ

2810976(Since 21st May 2010)

研究ブログ

研究ブログ >> Article details

2019/09/13

トーマス・ブーン・ピケンズ氏を巡るいくつかの思い出

Tweet ThisSend to Facebook | by suzumura

現地時間の9月11日(水)、米国の投資家のトーマス・ブーン・ピケンズ氏が逝去しました。享年91歳でした。


米国で敵対的買収を重ね、いわゆる「物言う株主」として名を馳せたピケンズ氏の存在が日本で注目されたのは、小糸製作所の筆頭株主になったことが明らかになった1989年4月1日のことでした。


ピケンズ氏による小糸製作所株の買い占めを報じた1989年4月2日付の日本経済新聞は、以下のように報じています[1]。


トヨタ自動車系の部品メーカー、小糸製作所の筆頭株主に米国のグリーンメイラー(企業乗っ取り屋)の一人、T・ブーン・ピケンズ氏が登場したことが一日、明らかになった。麻布自動車グループが保有していた小糸製株式の一部の名義が書き換わったとみられる。海外の大物乗っ取り屋が日本企業の筆頭株主となったケースは初めて。買い占めグループがトヨタ側に揺さぶりをかけるため名義を借りたとの見方もあり、トヨタ、小糸製作所は苦慮している。
小糸製作所は東京証券取引所一部に上場している自動車用照明の最大手メーカー。八九年三月期末で、ピケンズ氏が所有するブーン・コーポレーションの名義が新たに出た。株式数は三千二百四十万株(発行済み株式数の二〇・二%)で、トヨタの三千五十一万株(同一九・〇%)を上回り、筆頭株主に躍り出た。
ピケンズ氏は八四年に大手石油会社、ガルフ社を買収、これを複合企業のペン・セントラルに売却して多額の利益を上げるなど、米国で活発になっているM&A(企業の合併・買収)を象徴する人物として有名だ。
小糸製株式はこれまで麻布自動車グループが全体の三割程度を取得していたが、ほとんど名義を出していなかった。関係筋によると、麻布グループから保有株の一部がリース会社に渡り、リース会社が名義書き換えに際してピケンズ氏の名義を借りたとする見方もある。ピケンズ氏の名前を使い、麻布グループ側がトヨタに株式買い取りを迫る戦略とのとらえ方だ。
トヨタグループは一昨年、関西の不動産会社、日本土地に豊田自動織機製作所の株式を買い占められ、肩代わりを強いられた経験がある。


「乗っ取り屋」という表現や、麻布自動車や日本土地といった懐かしさを覚える社名がちりばめられた記事からは、それまで外国での出来事と思われていた外国人投資家による敵対的な企業買収に直面した小糸製作所やトヨタ自動車、さらに日本の社会の当惑と動揺の色が見て取れます。


その後、ピケンズ氏と小糸製作所陣営との激しい攻防戦は日本社会の関心を集め、連日のように動静が報じられたものでした。


私も、NHKが毎週日曜日の18時から放送していた経済番組「NHK経済マガジン」が扱う事態の推移を興味深く視聴したことを覚えています。


今や外国の投資家による日本企業の敵対的買収は珍しくなくなりましたし、「乗っ取り屋」という言葉の中に当惑の響きを見出す機会も少なくなってきました。


それだけに、今からちょうど30年前に起きた「ピケンズ・小糸問題」は過去の話となる一方で、日本企業を取り巻く環境の根本的な変化を実感させる歴史的な逸話になったのだと感慨深く思われるところです。


[1]ピケンズ氏筆頭株主に. 日本経済新聞, 1989年4月2日朝刊1面.


<Executive Summary>
Miscellaneous Impressions of Mr. Thomas Boone Pickens (Yusuke Suzumura)


Mr. Thomas Boone Pickens, a  business magnate and financier, had passed away at the age of 91 on 11th September 2019. On this occasion I epxress miscellaneous impressions of Mr. Pickens.


Trackback URLhttps://researchmap.jp/index.php?action=journal_action_main_trackback&post_id=75293
16:52 | Impressed! | Voted(0) | Comment(0) | Trackbacks(0) | 追悼文