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2019/12/05

「アフガニスタンの悲しみの声」が示す中村哲さんの努力の結果

Tweet ThisSend to Facebook | by suzumura

昨日逝去した非政府組織ペシャワール会の医師中村哲さんの事績に関しては、昨日の本欄で種々の取り組みの一端を瞥見いたしました[1]。


ところで、中村さんの死を受け、日本国内ばかりでなく、中村さんが1984年以来灌漑事業などに取り組んできたアフガニスタンでも追悼する人々がいるとのことです[2]。


また、オンライン上では、アフガニスタンで使われているダリー語やパシュトゥ語で中村さんへの弔意を示す数多くの投稿がなされており、中には「街や通りに『中村』という名前をつけたい」といった投稿もあるということです[3]。


こうした様子を耳にする際に思い出されるのが、石橋湛山が『東洋経済新報』の1932年2月27日号に執筆した社説「満蒙新国家の成立と我国民の対策」です。


すなわち、石橋は次のように述べています[4]。


一般的に云えば、日本が今日支那などに向って文明国顔をしておる其文明は、主として実に欧米から伝えられたものである。更に之を個人と個人の関係で云うなら、今日までの我が国運を開拓した優秀なる我人材の少なからざる数は、実に欧米人の指導教育に依って人と成った。精しい事績は茲に述ぶる余白も材料もないけれども、記者が記憶している所だけでも、日本に来ていた欧米人、また日本が向うに行って世話になった欧米人で、真に日本を愛し、何うか日本を善い国にしてやろうと云う情熱から、日本人の為に尽くして呉れた人々は少なくない。我国人中、支那に関係をもった人々で果して左様な親切心を以て支那人の指導教養に努めた者が幾許あろうか。


1931年に起きた満州事変によって中国東北部における権益の拡大を図る当局を間接的に批判する中で、石橋は、日本の文明の進歩は、明治維新後に真に日本を愛し、日本をよい国にしようという情熱によって献身的な努力を行った欧米人の努力のたまものであると指摘しています。


もとより1932年当時と現在の日本の対外関係は異なりますし、外国に赴き、その国の発展を実現させたいという情熱から、様々な努力をする日本人は決して少なくないことでしょう。


その意味で、中村さんは、アフガニスタンにおいて現地の発展に尽力した、外国のために「尽くして呉れた人々」の一人であったと言えます。


しかし、死後のアフガニスタン国内の反応を見る限りにおいて、中村さんの取り組みに対する人々の評価の高さが改めて示されたと言えるでしょう。


あるいは、現地が予期せぬ銃撃戦による落命という一種の興奮的な状態にあるということを勘案しても、「街や通りに『中村』という名前をつけたい」という声の上がることは、アフガニスタンにおける中村さんの活動に人々が恩義を感じていることをも推察させます。


このように考えれば、中村さんは真にアフガニスタンを愛し、どうかアフガニスタンを善い国にしようという情熱から、アフガニスタンの人のために尽くし人であったことが分かります。


こうした点も、中村さんの多年にわたる努力が確かに実を結んでいることを教えていると言えるのです。


[1]鈴村裕輔, 【追悼文】中村哲さんの取り組みを巡る雑感. 2019年12月4日, https://researchmap.jp/johpvcicz-18602/#_18602.
[2]国内外 悲しみ広がる. 日本経済新聞, 2019年12月5日夕刊11面.
[3]中村医師しのび国内外から追悼の声. NHK NEWS WEB. 2019年12月5日, https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191205/k10012202761000.html?utm_int=nsearch_contents_search-items_001 (2019年12月5日閲覧).
[4]石橋湛山, 満蒙新国家の成立と我国民の対策. 石橋湛山全集, 第8巻, 68頁, 2011年.


<Executive Summary>
Dr. Tetsu Nakamura and His Achievements Are Shown by voices of People in Afghanistan (Yusuke Suzumura)


Dr. Tetsu Nakamura, a medical doctor and the local representative of the Peshawar-kai, had passed away at the age of 73 on 4th December 2019. On this occasion I examine his achievement and evaluation by people in Afghanistan.


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