共同研究・競争的資金等の研究課題

2018年4月 - 2022年3月

金融危機時における銀行バランスシートリスクと貸出行動の誤認識問題

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
18K01693
体系的課題番号
JP18K01693
担当区分
研究代表者
配分額
(総額)
4,290,000円
(直接経費)
3,300,000円
(間接経費)
990,000円

本研究の目的は,金融危機時における銀行のバランスシートリスク(倒産リスク)に対する誤認識が,銀行行動の誤認識をもたらすことの可能性を実証的に分析することである.初年度である平成30年度においては,バブル崩壊後1990年代後半の我が国の金融危機時における銀行行動に着目した.
まずはじめに,①銀行のバランスシートリスクを簿価情報で測定するのが適切なのか,もしくはマーケット情報で測定するのが適切なのか,という点について,90年代後半に破綻した邦銀に関してケーススタディ分析を試みた.その結果,多くの破綻銀行において,破綻する数年前からマーケット情報であるマーケットキャピタルレシオは低迷していたのに対して,簿価情報である規制資本比率は上昇していた.この結果から,銀行のバランスシートリスクをより反映しているのは簿価情報ではなく,マーケット情報であるという示唆を導くことができる.その要因として,我国の自己資本比率規制が制度上内包している問題がある.本研究の貢献として,銀行政策の制度設計へのインプリケーションを挙げることできる.
次に,②そうした各指標によって銀行のバランスシートリスクを規定した際に,金融危機時における銀行の貸出行動は個別の指標ごとにどのように概念化されるのか,という点について,ローンレベルデータを用いた実証分析を試みた.その結果,銀行のバランスシートを規定する変数として簿価情報を用いた場合には「追い貸し」仮説が支持されるが,銀行のバランスシートリスクをより反映していると考えられるマーケット情報を用いた場合には「貸し渋り」仮説が支持された.上述の①の結果を踏まえれば,金融危機時の銀行行動は「追い貸し」ではなく「貸し渋り」であったことが示唆される.
上述の分析結果を英語論文に取りまとめ,日本ファイナンス学会,Econometric Societyなど国内外で学会報告を行った.

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-18K01693
ID情報
  • 課題番号 : 18K01693
  • 体系的課題番号 : JP18K01693