MISC

2011年

地方都市における都市開発の変化:札幌市を事例として

日本地理学会発表要旨集
  • 塩崎 大輔
  • ,
  • 橋本 雄一

2011
開始ページ
26
終了ページ
26
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.14866/ajg.2011s.0.26.0
出版者・発行元
公益社団法人 日本地理学会

1. はじめに わが国では高度経済成長期以降、都市部への人口流入と経済的発展を背景として、都市とその周辺で多くの宅地開発が行われてきた。特にバブル期には経済的要因から、全国的に都市開発が活発化し、またマクロスケールでは大都市圏から非大都市圏へ、ミクロスケールでは地方中核都市とその周辺に開発が集中する傾向が明らかにされている。しかし、これまでこういった全国的な都市開発の動向と地方における都市開発の詳細な動向が比較・考察されることは少なかった。本研究の目的は、全国の動向を背景に、地方の都市における開発行為の時系列変化を明らかにすることである。2. 研究方法 まず都市計画法に基づき、開発事業主から札幌市に申請された開発行為が全て記載されてある『開発許可申請登録簿』のデータ(計2285件)を整理する。そのデータを基に(1)札幌市における開発行為の時系列変化を分析し、事業件数と推移から開発行為の動向を把握するとともに、先行研究によって論じられた全国の都市開発の動向と比較・考察を行う。(2)札幌市市街化区域内において、開発行為の分布を分析し、札幌市における都市開発の時系列変化を明らかにする。(3)札幌市において行われた開発行為を事業主別に分類する。そして開発行為を本州資本の企業と、道内資本の企業とに分類し、その分布及び開発規模の時系列変化を分析することによって、本州資本の企業の企業が地方の都市開発に及ぼす影響を明らかにする。3. 研究結果 本研究の結果は以下の通りである。(1)札幌市における開発行為の件数及び面積は、1980~1986年に減少し、1987~1994年に増加傾向に転じる。そして1995年から再び減少傾向転じ、全国の都市開発の動向と同様の傾向を示した。(2)全国の都市開発は3大都市圏から非大都市圏へ開発が移動するのに数年のタイムラグがあったが、地方中核都市では、3大都市圏とほぼ同時期に開発が集中していた。(3)札幌市市街化区域内ではバブル景気の影響を受け、開発行為が都市域全体に広がっていった。その後バブル経済の崩壊から約5年後に、開発行為が拡大から縮小に転じ、2000年代に入るといわゆる都心部での開発が見られるようになった。(4)本州資本の企業が郊外地域において大規模開発行為を行い、開発が行われた地域の道路区画やインフラの整備が整う。そこに道内企業の中・小規模開発が集中する傾向が見られた。(5)本州資本の企業は好景気時に札幌市において開発行為を行うが、不況期には地方における開発を控えるといった傾向が明らかとなった。またバブル経済の崩壊後、本州資本の企業のうち宅地開発を中心とする企業は継続的に開発行為を行うが、商業ビルなどを手掛ける企業は開発許可申請の間隔が10年以上開くようになった。道内資本の企業はバブル経済の崩壊後も継続的に開発行為を続けており、バブル経済期よりも開発面積を増加させている企業も見られた。 以上のように本研究では、開発許可制度を利用することで、地方における開発行為の詳細な時系列変化を明らかにした。また全国の都市開発の動向と併せて、地方の都市開発を考察した。

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.14866/ajg.2011s.0.26.0
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130007017547
ID情報
  • DOI : 10.14866/ajg.2011s.0.26.0
  • CiNii Articles ID : 130007017547

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