2009年3月
医学教育における文化人類学の関わり方についての一考察
国立民族学博物館調査報告
- 巻
- 85
- 号
- 開始ページ
- 77
- 終了ページ
- 92
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 研究論文(学術雑誌)
- DOI
- 10.15021/00001121
本論では,文化人類学の立場にありながら医学教育に関わってきた経験に基づき,医学教育に文化人類学の視点あるいは社会文化的視点を盛り込むにあたって,どのような課題が存在し,それに対してどのような工夫が必要であるかについて検討する。 医学教育において文化人類学的なテーマを教育するにあたっては,自然科学と社会科学の間にある垣根をどのように越えるか,個人主義的な傾向の強い医学教育モデルに「社会」という概念をいかに盛り込むか,生活者にとっての病いや医療についての理解の必要性をいかに訴えるか,医学生の「役に立つ」ことに価値を置く学習姿勢にどのように応えるかといった課題がある。これらに対して筆者は,生態学や認知科学を介して生物学と社会科学を橋渡しする視点の提示,自然・人文・社会科学にまたがるLifeという概念の導入,医学とは質的に異なる生活者の病気理解の提示,問題に基づく学習(PBL)の活用などを試みている。 このような他分野との関係における試行錯誤は,人類学の応用学としての側面についての検討に加えて,人類学自体を再考する機会にもなりうると考える。
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- DOI : 10.15021/00001121