MISC

2015年3月10日

「東北地方太平洋沖地震津波遡上高分布図」とその意義

日本地理学会発表要旨集
  • 杉戸信彦
  • ,
  • 松多信尚
  • ,
  • 石黒聡士
  • ,
  • 佐野滋樹
  • ,
  • 内田主税
  • ,
  • 千田良道
  • ,
  • 坂上寛之
  • ,
  • 鈴木康弘

2015
87
開始ページ
343
終了ページ
100166
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.14866/ajg.2015s.0_100166
出版者・発行元
公益社団法人 日本地理学会

1.「東北地方太平洋沖地震津波遡上高分布図」<br> 津波災害の理解には,浸水高に加え,遡上高の空間分布に関するくわしい情報が不可欠である.しかし,2011年東北地方太平洋沖地震の津波についても,広域を網羅した連続的かつ高解像度の均質データは得られていなかった.<br>発表者らは,日本地理学会災害対応本部津波被災マップ作成チーム「1:25,000津波被災マップ」の浸水域GISデータに対し,国土地理院保有「東日本大震災からの復旧・復興及び防災対策のための高精度標高データ」(地震後に航空LiDAR測量によって取得された2 mまたは5 mメッシュのDEM)を使用して標高値を付与することで,津波遡上高の空間分布をくわしく明らかにしてきた(杉戸ほか 2013; 鈴木ほか 2013).<br>さらに,国土地理院による地震直後撮影の航空写真のオルソ画像が有していた位置ずれをヘルマート変換で解決するなど,重要な問題点を解決し,「東北地方太平洋沖地震津波遡上高分布図」としてまとめることができた(松多ほか 2014; 杉戸ほか 2015).基図は国土地理院による地震後撮影航空写真のオルソ画像であり,範囲は岩手県から福島県北部までに及ぶ.東北地方太平洋沖地震津波合同調査グループによる現地調査データもあわせて掲載されている.例を図1に示す.<br>津波遡上高分布図は,杉戸ほか(2015)が指摘するように,広域を網羅した連続的かつ高解像度の均質データであり,遡上高の地域性とその要因を,海岸地形や津波の性質などの観点から検討する基礎資料となる.津波の直後に遡上高をいち早く把握する方法論としても重要である. <br>2.データ公表と今後<br> 津波遡上高分布図は現在,紙媒体(松多ほか 2014)のみにとどまっている.しかしこの春,防災科学技術研究所の「eコミマップ」上で閲覧可能とするほか,名古屋大学のサイト(http://danso.env.nagoya-u.ac.jp/20110311/)に,紙媒体の電子ファイルおよびGISデータ一式の入手案内を掲載する予定である.<br> また,青森県中南部および福島県中部~千葉県北部についても作成をすすめており,やはりこの春公表する予定である.地震後の航空写真やDEMが必ずしも十分でない,あるいは「1:25,000津波被災マップ」の浸水域ラインが地震後撮影航空写真のオルソ画像ではなく1:25,000地形図をベースとして作成されているなどの理由で,岩手県~福島県北部と比べ,小縮尺での作成となる見込みであるが,全体として青森県中南部~千葉県北部の津波遡上高分布図が揃うことになる.発表当日は,全域を見渡しながら遡上高の地域性とその要因について検討を行う.<br>発表者らは現在,津波遡上高分布図をベースとして,被災状況や聞取り調査などの現地調査の結果,津波災害の歴史,教訓などを盛り込んだ,多分野連携型アトラスの作成を模索しているところである.<br>○謝辞 日本地理学会災害対応本部津波被災マップ作成チームには,「津波被災マップ」の浸水域GISデータを使用させて頂いた.国土地理院には地震後の航空写真やDEMをご提供頂いた.記して感謝いたします.<br>○文献 松多ほか 2014. 『東北地方太平洋沖地震津波遡上高分布図-2.5万分の1編集図-』名古屋大学減災連携研究センター; 杉戸ほか 2013. 日本地理学会発表要旨集 84: S0403; 杉戸ほか 2015. 地学雑誌 124(2): 印刷中; 鈴木ほか 2013. 土木計画学研究・講演集 47: 394.<br> <br>

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.14866/ajg.2015s.0_100166
J-GLOBAL
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201502248719608699
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130005489952
URL
http://jglobal.jst.go.jp/public/201502248719608699
ID情報
  • DOI : 10.14866/ajg.2015s.0_100166
  • ISSN : 1345-8329
  • J-Global ID : 201502248719608699
  • CiNii Articles ID : 130005489952

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