2017年12月
小児における高用量バンコマイシン投与の要因解析 単施設後方視的症例対照研究
医学と薬学
- ,
- ,
- ,
- ,
- 巻
- 75
- 号
- 1
- 開始ページ
- 37
- 終了ページ
- 42
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 出版者・発行元
- (株)自然科学社
バンコマイシン塩酸塩注(VCM)は臨床効果と副作用は血中濃度に依存するため、TDMにより用法・用量を最適化することが望まれる。小児への投与は40〜60mg/kg/dayを2〜4回に分割して1時間以上かけて投与するが、80mg/kg/day以上の高用量投与を行っても有効血中濃度域(10〜15μg/mL)に到達しない症例が多く認められる。本検討では、0歳から6歳までの患児で、高用量(80mg/kg/day以上)のVCMを投与された症例の患者背景について、対照群(80mg/kg/day未満)との比較による後方視的観察研究による要因探索を行った。VCM投与患児は、高用量群および対照群で303例、1,678例だった。そのうち選択基準を満たした86例の高用量群(104.1±41.5mg/kg/day)および、840例の対照群(57.9±10.7mg/kg/day)について比較した結果、粗解析では在胎週数、推定糸球体濾過量、輸液療法の施行、腹水・胸水有り、血液腫瘍患児、先行手術の施行について有意差を認めた。多変量解析では、腹水・胸水有り、先行手術の施行が高用量投与因子として抽出された。抽出された因子から細胞外液の増加、術後の血管透過性亢進がVCM負荷量需要増加の要因であることが考えられた。これまで報告のある循環作動薬や人工呼吸器の使用、全身の重症度に関連する因子等が選択されなかった要因としては、多様な患者背景を一様に比較したことによる個々の要因の潜在化、検査値に反映されない日内変動による影響等も考えられ、臨床の投与設計においては症例ごとに要因を詳細に評価していく必要がある。(著者抄録)
- ID情報
-
- ISSN : 0389-3898
- ISBN : 9784915525995
- 医中誌Web ID : 2018121686