基本情報

所属
慶應義塾大学 法学部 訪問研究員(日本学術振興会特別研究員RPD)
学位
博士(社会学)(2013年3月 一橋大学)

連絡先
iso.naokikeio.jp
研究者番号
90712315
J-GLOBAL ID
201301067871885182

 大学院では一橋大学大学院社会学研究科とフランス国立社会科学高等研究院で学び、2013年3月に一橋大学より博士号を取得しました。その後、大阪大学の大型教育研究プロジェクト支援室(現・経営企画オフィス)特任助教を経て、現在は日本学術振興会特別研究員です。2021年度の教育活動として、江戸川大学で非常勤講師として社会調査と社会学概論の授業を担当し、中央大学でフランス語の授業を担当しています。私の取り組んできた研究課題は、大きく分けて以下の3種類(社会学史研究、フランス社会研究、日本社会研究)になります。

 

【1】社会学史研究

 私が博士論文で行ったのは社会学史研究で、フランスの社会学者ピエール・ブルデュー(1930-2002)の学説に焦点を当てました。大きな問題関心としてあったのは、社会学において理論と社会調査にはどのような関係があるか、また社会学において科学的であるとはどういうことか、ということです。こうした問題関心の延長線上で、自分でも社会調査を行うようになりました。社会調査を通じて、その方法と認識論に関心を持つようになりました。

1-1.ピエール・ブルデュー研究

 社会学史研究としての私のブルデュー研究は、博士論文までは公刊されたテクストを通じた理論的考察や学説史的位置付けの検討をしていました。現在の私の研究方法は、社会学史研究というよりも「思想史と社会史の弁証法」と呼べるかもしれません。アーカイブに保管されている書簡などの(一次)史料も用いた研究と哲学・思想史の研究をブルデュー研究という観点から並行して進めているからです。

 私のこのようなブルデュー研究の成果は、2020年2月に『認識と反省性:ピエール・ブルデューの社会学的思考』として刊行しました。この本で問うているのは「社会学的認識とは何か」ということですが、この問いをブルデューの業績に着目して論じています。社会学的認識は、研究対象を内部観察することによって可能になります。しかし、認識対象と認識主体が同一化してしまうと、科学的認識にはなりません。そこで、科学としての社会学には認識主体と認識対象を分けた上で、認識主体自体の対象化も必要になります。ブルデューはこのことを反省性の実践として行いました。このようなブルデューの社会学的思考の歩みを通じ、社会学的認識とは何かを拙著では問うています。

1-2.亡命知識人と社会学

 以上のブルデュー研究とは別に、科研費の基盤(B)の共同研究「<善く生きる>ための社会学の基盤構築」(研究代表者:吉野浩司)に研究分担者として関わっており、フランスに関わる亡命知識人の研究にも取り組んでいます。この共同研究は社会学史研究ですが、私の扱う対象は社会学に限定されません。研究プロジェクトは進行中ですが、現段階での土台となる考察は、以下の論稿にまとめてあります。

https://researchmap.jp/isonaoki/published_papers/29919241

 

【2】フランス社会研究

 2009年から開始したエスノグラフィを中心とする社会調査は、パリ郊外で移民が人口の大半を占める公営団地にある柔道クラブを拠点に2年半かけて行いました。この調査は、フランスにおける移民問題と日本文化受容について研究したものでした。その研究成果はまだ十分に出せておりませんが、拙稿「パリ郊外における柔道実践」などに見ることができます。

 この調査研究は「パリ郊外研究」と「フランス柔道研究」へと分岐させ、前者を「統合と分化のフランス」研究、後者を「日仏の柔道と教育」研究として異なる研究課題に取り組んでいます。以下、後者の説明から行います。

2−1.日仏の柔道と教育

 フランスは国単位では柔道人口が最も多く、競技人口は小学生に集中しています。フランスの小学生の多くが柔道を習うようになったのはどうしてか。これを広義での教育との関係で探るのが、この共同研究のねらいになります。日仏両国の事例を取り上げ、柔道一般と教育の関係について考察しています。この共同研究は、日本武道史の研究者、フランス柔道史の研究者、フランスの教育の研究者とともに、2021年に共著の単行本を刊行する計画で進めています。

2−2.統合と分化のフランス

 2016年度から2018年度にかけては、「多文化社会における社会統合と社会分化:パリ周辺地域における社会的境界再編成の研究」という研究課題に取り組みました。現在は、この研究課題を発展させて「統合と分化のフランス」というテーマで理論研究と複数の事例研究に並行して取り組んでいます。

 この研究は、社会統合と社会分化が同時並行的に展開することを、フランスのいくつかの事例と統計データの分析を通して解明することを目的としています。この目的には、独自の「統合と分化の社会理論」の構築も含まれます。この研究課題で扱う事例は上記2つの研究課題と異なりますが、具体的な内容については学会発表や論文などで研究成果が公になってきてから紹介したいと思います。

 

【3】日本社会研究

 私の日本社会研究は、「現代日本の文化と不平等」が中心になります。これに加えて、科研費・基盤(B)の「信用スコアの受容に関する社会学的研究」(研究代表者:赤堀三郎)にも研究分担者として関わっており、科学技術が政治と不平等にどう関わるかをウェブ調査を通じて明らかにするのがこの共同研究における私の役割になります。以下、前者についての説明から行います。

3-1.現代日本の文化と不平等

 日本社会については、歴史研究と計量分析という2つの方法で研究しています。前者については、現代日本において「正統文化」とは何かという問題を戦後日本美術に焦点を当てて研究しています。「正統文化」とはブルデューが自明のように使う概念ですが、これが具体的に何であるかを現代日本の文脈で示すのは非常に難しいです。では、あらゆる文化によってつくられる不平等、あるいは文化の不平等というものがないかと言えば、やはりあると言わざるを得ないでしょう。それでは、文化の「上下」やある種の文化の「正統性」とは何か、そもそも「文化」とは何か、という問題に歴史研究として取り組んでいます。

 計量分析のアプローチでは、「文化と不平等」という観点から研究を進めています。日本の調査(サーベイ)データを用いつつ、幾何学的データ分析(Geometric Data Analysis)といわゆる「ブルデュー派階級分析」の応用と展開を試みています。調査データとしては、社会階層と社会移動全国調査 (SSM調査)のものを用いているほか、ウェブ調査のものを用いています。後者については科研費の助成を受け、私が独自に質問項目をつくり、調査会社を通じて2018年に実施した調査になります。この調査で得られたデータの分析結果はまだ論文として公刊されていませんが、南アフリカ、フランス、日本、オーストラリアなどで開催された学会大会や国際会議で研究成果を発表しました。現在、論文としても英語での公刊を目指しているところです。

 この計量分析の研究については、将来的には国際比較を行いたいと思っており、そのための準備も少しずつ進めています。幾何学的データ分析と「ブルデュー派階級分析」を用いる研究者はヨーロッパに集中しているため、主にヨーロッパの研究動向と自分の研究が接続するように意識して研究を進めています。ブルデューの『ディスタンクシオン』を本格的に応用した研究成果である『文化・階級・卓越化』を5名で翻訳しましたが、私の場合はこの翻訳も国際比較研究を進める上での研究活動の一環になっています。

 同書の筆頭著者であるトニー・ベネット教授が中心となり、Australian Cultural Fieldsという研究プロジェクトの一環で、社会調査が2017年に実施されました。この調査を踏まえた研究と私の日本社会研究も接続させ、ヨーロッパ以外での「文化と不平等」研究の可能性を探っていきたいと思います。

3-2.監視資本主義と与信管理技術

 これは科研費の助成を受けた共同研究であり、私は与信管理技術を主に研究しているわけではありません。2020年12月に実施したウェブ調査では、与信管理技術に関する質問項目だけでなく、社会階層や社会意識に関わる質問項目も取り入れました。私の役割は、信用スコアの受容が社会意識や社会階層とどう関わるかを調べるためにウェブ調査の企画と設計を行い、さらにそのデータを用いた計量分析を行うことになります。

 このような研究を発展させ、監視資本主義研究とするのが現在の目標です。私たちが日常的に行っているインターネットを用いた情報収集や情報発信は、政府や企業に個人情報として日々収集されています。特に企業は、そうした情報をもとにマーケティングを行い、消費者の行動を誘導しようとします。フェイクニュースや陰謀論が、このような企業行動と結びついていることもあります。私はこうした問題を監視資本主義という観点から捉えていくつもりです。

 

(所属先住所)
〒108-8345 東京都港区三田2-15-45
慶應義塾大学 南館20403-6


書籍等出版物

  10

論文

  17

MISC

  9

共同研究・競争的資金等の研究課題

  6

講演・口頭発表等

  31

その他

  4