研究ブログ

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2019/01/02

登壇予定(オペレッタを語るVol.2「日本語訳詞の可能性」)

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外部出演の宣伝です。

オペレッタを語るVol.2「日本語訳詞の可能性
日時:2019年1月7日(月)19:00開演(開場は開演の60分前)
会場:南青山マンダラ(東京・港区)
チケット:¥4,000(全自由席、ワンドリンク込み、申し込みはリンク先から)

トーク:大西由紀(東京大学助教)、角岳史(指揮者、演出家)
出演:針生美智子(ソプラノ)、高田正人(テノール)、野間美希(ピアノ)

演奏予定曲目の一部はこちら。まだ隠し球あります(……のはず)。

主催の東京オペレッタ劇場は、オペレッタの日本語訳詞上演に取り組んでいる団体です。混線気味の原作台本を交通整理する手際の良さ、日本語訳詞の聞き取りやすさ、出演者の日本語歌唱と芝居のレベルの高さに、つねづね感服していたところ、今回のお話をいただいて、こちらとしても願ってもない話でした。

当日はわたしからは、明治~大正の日本語訳詞の歴史的展開とか、おもしろ/ざんねん事例とかの話題提供をさせていただくのでしょうが、むしろ現代の日本語訳詞の作り方については、こちらから聞きたいことが山ほどあります。楽しみです。

17:45 | 投票する | 投票数(0) | コメント(0) | 告知・報告
2019/01/02

益田太郎冠者『喜劇 新オセロ』(西沢栄治演出)@アトリエファンファーレ高円寺

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ファンファーレコレクション vol. 1『喜劇 新オセロ
2018年12月12日(水)~19日(水)全14回公演
アトリエファンファーレ高円寺
作:益田太郎冠者
演出:西沢栄治

明治44(1911)年開場の帝国劇場の経営陣の1人で、名物の「女優劇」の台本を数多く手がけた益田太郎冠者(1875~1953年)の作品が上演される珍しい機会。19日(水)16時の最終回を見た。キャストはAチーム。

今回上演された『喜劇新オセロ』は、帝劇開場以前の明治39(1906)年10月、川上音二郎一座の明治座興行で初演されたもの。太郎冠者が本業の会社経営の傍ら劇作に手を染めるようになったのは明治37(1904)年末のことなので、この一幕物はこの喜劇作者にとって、ごく出発期の作品ということになる。初日に先立って出版された台本(彩雲閣、明治39年)は『国立国会図書館デジタルコレクション』で全文が読めるほか、川戸道昭・榊原貴教編『明治期シェイクスピア翻訳文学書全集』(大空社、平成11~12年)でも影印本化されている(第24巻)。

川上一座はこれに先立つ明治36(1903)年2月に、シェイクスピアの元ネタのあらすじをもう少しきちんとなぞった翻案『オセロ』を上演している。2度の洋行を経た川上が「正劇」を標榜して行なった公演の第一弾だ。江見水蔭(1869~1934年)による翻案台本は、『文藝倶楽部』第9巻第3号(明治36年2月1日)に掲載されていて、『JapanKnowledge Lib』から全ページが読める。前掲の大空社の全集はこの資料を欠いている代わりに、筋書の配役と梗概を収録している(第45巻)。

江見水蔭の翻案は、物語を日本の台湾統治初期の頃に置き換えている。登場人物たちの名前は、オセロが室鷲郎(むろ・わしろう)、デズデモーナは鞆音(ともね)、イアーゴーは伊屋剛蔵(いや・ごうぞう)、エミリアはお宮(おみや)、キャシオーは勝芳雄(かつ・よしお)……と、控えめな語呂合わせによって日本風に置き換えられ、さらに鷲郎は出自不明(「新平民」との噂もある)ながら一代の武勲によって台湾総督の地位を得た、一方の鞆音は維新の元勲の令嬢……といった形で、原作の人間関係も当時の日本への置き換えが試みられている。電報とか蓄音器とか、同時代の最先端の小道具が取り入れられているのも楽しい。

太郎冠者による『喜劇新オセロ』は、この江見水蔭版・翻案『オセロ』の役名を拝借し、ただしオセロの出自に関する部分をばっさりカットして、「若くて美人な嫁さん貰って舞い上がった男の猜疑心が巻き起こした家庭内ドタバタ喜劇」に落とし込んだものだ。翻案『オセロ』と『喜劇新オセロ』の両者とも、鷲郎と鞆音は川上夫妻が演じていて、翻案『オセロ』のセリフを、『喜劇新オセロ』の登場人物たちが(時に不正確に)引用してみせたりもする。つまりこの小市民喜劇は、「大沙翁」の名作の卑近なパロディであるとともに、川上一座にとって記念碑的な作品のセルフパロディでもあるわけで、それを座長と看板女優が嬉々として主演しちゃった、そういう作品なんである。それが駆け出しの劇作家であった太郎冠者ひとりの発案なのか、川上夫妻らのアイデアが入っているのかは分からないけれど。

……という余計な蘊蓄を引っさげて、鼻息荒く劇場に駆けつけてみると、客入れの音楽がおそらく昭和戦前期の録音と思われる日本語歌唱のジャズソングなので、ちょっと出鼻をくじかれた。幕が開いてからも、女中のお宮(本多由佳)の衣装が、「現代のスタイリストの考える大正時代のカフェーの女給」風だったり、舞台奥に色ガラスはめ込みの格子窓(たぶんアール・デコの頃の流行)があったりと、全体に「時代の雰囲気」を出そうとはしたのだろうけど、初演の明治39年より後の風俗がだいぶ混じっているのが、正直ちょっと目についた。まあ細かいこと言えばキリがないし、リアルに明治39年の小金持ちの居間を再現されても細かすぎて伝わらないし、太郎冠者作品が現代の劇場で取り上げられるだけで御の字なわけだし……、くらいな気分で初めは見ていたのだけど、フタを開けてみたら、太郎冠者の台本がほとんど改変なく使われていて、それでちゃんとスピード感あるドタバタ喜劇になっていて、しかも登場人物それぞれが、現代の目で見ても「いるよねこんな奴」な感じに作られているものだから、最終的にはすっかり感心してしまった。

太郎冠者の台本は、言葉尻からト書きの指示に至るまで、かなり忠実に再現されていたと思う。強いて変更箇所を挙げるなら、調度類を一部省略したり配置を変えたり(これはおそらく舞台の狭さに合わせて)したのと、ト書きにない動作を付け加えて笑いを取った箇所があること、くらいじゃないかしら。セリフの書き換えで気づいたところは、鷲郎がお宮に鞆音の監視を持ちかけるくだりと、「トラフオーム」(彩雲閣版p.38。以下、太郎冠者の台本からの引用はすべてこの本から)を「結膜炎」とした箇所くらい。前者は、太郎冠者の台本では、「特別の働」をすれば「五円ばかり」報酬をやると言われたお宮が「でも私なんぞに……」と「恥かしさうに」答えていて(p.44)、おそらく愛人契約を持ちかけられたものと誤解した設定なのだろうけど、今回の上演では単に額の大きさに驚いただけのような反応にしてあった。そこにオトナの配慮がはたらいたのかは不明。後者はたぶん、原文ママだと今の観客に通じないという配慮なのだろうけど(わたしも「トラフオーム」という表記は初めて見た)、それならもっと通じなさそう(というより、誤解を招きそう)な「ハイカラのチンチン」(p.11。原文は2文字分の踊り字を使用)はそのまま連呼されるし、「お気でも狂つたのか知らん」(p.5)系の表現も特にいじってはいなかった。

それだけ台本を尊重した上演だったにも関わらず、舞台の印象は、台本を一読しての印象とは全然違っていた。とりわけ鷲郎の人物造形。台本を読んだ時点では、ゴリゴリの明治の家父長で、女とか若い男とかいった自分と違う存在はハナから認めない……みたいな人物を想像していたのだけど、この日の鷲郎(森一弥)は、人好きのする丸顔の、ちょっと気の弱そうな今時の夫として描かれていた。台本では誤解の解けた大団円で鷲郎が「アヽ今迄は忌はしい夢を見て居たが、是からは楽しい夢を見ませうね……」(p.124)と言って幕になり、わたしはこの「見ませうね」という突然の優男風の語尾を薄ら寒く思っていたのだけど(よく「DV男はDVしてないときは優しい」と言うけれど、そんな感じの取ってつけた猫撫で声に感じた)、森の鷲郎だとこの語尾にあんまり違和感がなくて、むしろこれがこの人の素で、それまでは何か憑き物につかれてたんだな、と素直に思えた。作中、鞆音(中島妙子)の浮気を邪推した鷲郎がかなり無茶苦茶なことを言うのも、この鷲郎だと小動物がムキー! となってる感じで、まあ可愛げがある。

だから逆に鷲郎の登場からしばらくは、正直「明治男の威厳がないなー」と思っていたのだけど、見ているうちにこれもアリだと思えてきた。台本によると鷲郎は、結婚までは男友達とばかりつるんでいて(p.3)、恋愛小説にどハマりして影響を受けまくっているくせに、あくまで妻の読んでいるものを退屈しのぎに手に取っただけだと言い張っていて(p.28)、容貌のまずさを気にしている(p.35-36)のだけど、その辺の特徴だけ取り出してみたら、今時の気弱系男子にも充分いそうじゃないですか。とりわけ「伊屋剛蔵氏の訳したシヨツペンハウエルの婦人論」(p.24、イアーゴーの名前をこういう形で出してくるか!)を引き合いに出して「婦人の天性」を云々するあたり(p.31-33)なんか、現代のいわゆる「ネットで女叩き」と、論法も主張も大して変わらない。明治の男尊女卑の戯画的な典型例、として読んでいたものが、突如同時代性をもって目の前に立ち現れてきて、たいへん驚いた。

同じことは、鞆音の浮気相手だと疑われてしまう小説家の勝芳雄(大森寛人)にも言える。わたしはこれをうっかり、現代のガラで「おてくさん」が演奏される時の木佐野さんのよくある役作り、みたいなのを想定して読んでいたのだけど(←一般に分かりにくい比喩だし、わたし自身明治39年以降の風俗に引きずられていることを暴露している)、このプロダクションではこちらも今風に味つけされていた。大森の芳雄は、衣装と帽子こそ闘牛士風にド派手にしてあるのだけど、長めのパーマヘアに、ボストン型のアイブロウメガネなんかかけちゃって、顔と喋り方はわりと今時のサブカルこじらせ男子なんである。凡百の木佐野さんが、舞台の上でだけ通じる記号みたいになってるのに対して、大森の芳雄には「いるよねこんな奴」と思わせるリアリティがあった。あんなヘンテコ衣装でハンデを負っていたのに。

制作側ではチラシに「テーマナシ」「社会性ナシ」と大書きして、作品の娯楽性を強調しているのだけど、いやいやどうして、1世紀以上も昔の台本の同時代性にこういう形で気づかせてくれた、という点で、今回の上演はじゅうぶん意義深いものだったと思う。

あと自分の研究上の関心からあれっと思ったのは、登場人物のセリフの長さ。鷲郎の長ゼリフは、たいていは舞台上の相手に聞かせるための演説調なので、「壮士役者」をもって任じていた川上にも務まっただろうと思う。問題はお宮の開幕早々の長ゼリフだ。この家の主人は結婚してから様子が変だ、という事情を、掃除をしながらの一人言のていで観客に説明してくれるのだけど、舞台上に聞き手のいないこの長ゼリフは、紙面では見開き2ページ近く続く。ト書きが挟まることもあって、さほど違和感なく読み進めてしまったけれど、実際の上演で聞くと、現代の役者さんの達者なセリフ回しをもってしても、実に長かった。

明治の日本では、西洋演劇にみられるような独白は日本の古典演劇にはない、だから導入しなくちゃいけない、でも難しい、ということになっていた。川上一座では、江見水蔭版の翻案『オセロ』のあと、『ヴェニスの商人』を挟んで明治36(1903)年11月に、土肥春曙(1869~1915年)・山岸荷葉(1876~1945年)の台本で、翻案『ハムレット』を上演しているのだけど、河竹登志夫の調査によると、その際には、主人公の7つの独白(ソリロキー)は、すべて対話に書き換えられたりカットされたりしている。『ハムレット』の独白が独白として舞台上で読み上げられるには、明治40(1907)年まで待たねばならなかった(河竹登志夫『日本のハムレット』南窓社、昭和47年)。もっとも河竹は同じ本の中で、叙景や経緯の説明のような形而下の内容の長ゼリフならば日本の古典演劇にも前例がある、という指摘もしていて、ここでのお宮の長ゼリフはまさにそれに当たるのだけど、とはいえ明治39年の初演時に、川上一座の俳優にこの長ゼリフがこなせたのだろうか(お宮の初演者は女形の片桐七五三太)。同時期に実際に上演された台本を、他団体のものも含めて、もう少し見てみないといけないと思った。

喜劇の殿様―益田太郎冠者伝 (角川叢書)
高野 正雄
角川書店(2002/06/01)
値段:¥ 3,024


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2018/12/27

「見開きのPDFファイルをKindleで読みたい」、逆転の発想であっけなく解決

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富士通「ScanSnap SV600」をひたすら自慢する前回の記事の中で、話のついでに、「Kindle Paperwhite」を買ったけどいまいち使いこなせていない、という話を書きました。

わたし今年に入ってから、PDFビューワにするつもりで「Kindle Paperwhite」を買ったのですが、『国デコ』からダウンロードしてきたPDFは基本横長なので、画面が縦長固定のKindleで読むには不向きで、仮想プリンタを導入してページを半分に切ろうとしたものの、右開きの資料だと偶数ページと奇数ページの配列が逆になってしまって……で、結局ほとんど活用できずにいて、割と黒歴史になっているので。
大西由紀「富士通ScanSnap SV600礼讃(1): A3ノビサイズの原稿も読み込める

その後ふと思いついたのですが、画面が回転しないなら、PDFのページを回転させれば良いじゃない。

思いついたら実験だ。以下はすべて、Kindle Paperwhite(第7世代)+MacBook Pro(Late 2013、OSはHigh Sierra 10.13.6、「プレビュー」のバージョンは10.0 (944.5))の組み合わせで試しました。

『国デコ』から「全コマダウンロード」ボタンで入手した横長のPDFを……
『国デコ』全コマダウンロード
[サンプルとして使用したのは、益田太郎冠者『喜劇新オセロ』(彩雲閣、明治39年)。『国デコ』上で「インターネット公開(保護期間満了)」となっている資料です]

Mac「プレビュー」で開いて、サムネイルでどこか1ページを選択した状態から「command」+「A」で全ページ選択し、その状態でツールバーのボタンから「回転」(あるいは「ツール>反時計回りに回転」)。回転の向きは、後述のスワイプ方向の問題に関わってきます。
「プレビュー」で反時計回りに回転

こうして縦長になったPDFファイルをKindleに移し(わたしはMacbookとKindleを直接USBでつないでファイル操作しています。たしか最初にMac側で「Android File Transfer」というアプリをインストールする必要があったはず)、

KindleでPDFを開きます。縦持ちだと、こう見えます。
Kindleで開く

横向きに持ち直しても、画面は回転しません。見開き横長のファイルを読むにはちょうど良い向きです。

次のページへとめくるには、この向きの場合だと、下から上にスワイプ。すごく直感的とは言えませんが、割とすぐ慣れました(PDFファイルの編集時に「時計回りに回転」を選んだ場合、ページめくりのスワイプ向きは上から下になります)。
読める向きに持ち直す

少なくとも、縦長・縦書きのPDFを縦持ちで読んでいるときでも、ページめくりが「右から左にスワイプ」なのに比べたら、なんぼかマシ。
縦置き・縦書きPDFはページめくりで迷う
[サンプルは旧姓時代の拙稿(伊藤由紀「小林愛雄の歌劇翻訳──《ボッカチオ》の方法──」、『比較文学』第51巻、2008年)。ここでは、『J-STAGE』で配布されているPDFを使用]

おっと、その問題も、PDFファイルを180度回転させたうえで、Kindleを上下逆にして持てば、解決するのでは……?

ためしにやってみようとしたら、このPDFでは「プレビュー」の「回転」ボタンが反応しないうえに、「元の書類を変更できないため、変更内容を含む複製が作成されました」というエラーメッセージが表示されました。これはJ-STAGE側の(それとも『比較文学』の?)仕様なのかな? 

なので、ここから先は別のファイルで試した結論だけ。180度回転させたPDFを用意してKindleに渡し、そのファイルが正しい向きで表示されるように端末を持ち替えたら、ページめくりはたしかに左から右へのスワイプでできるようになりました。でも今度は、進捗状況の数字が上下逆向きになって左上に表示されるのが気になるように。

そんなこんなで、ファイル操作のひと手間を考えたら、普通に最初から汎用のタブレットを買って、端末の回転に伴って画面も回転するようにしておくのが良かったんじゃないか、と思わなくもないです。でももう買っちゃったものは仕方ないじゃない(←典型的な「サンクコストの誤謬」ってやつ)。

同じことで困っている人がどのくらいいるのか分からないけれど、一応記録しておきます。

23:54 | 投票する | 投票数(0) | コメント(0) | 研究ツールの使い方
2018/10/02

富士通ScanSnap SV600礼讃(2): 分厚い製本雑誌も、付属ソフトの補正で何とかなる

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(1)はこちら

SV600を使い始めて間もなく、図書館で合冊で製本した結果、約7.5cmという厚みになってしまった大正期の雑誌から、記事のコピーを取る必要が生じました。図書館ではコピー自体はOKという判断だったのですが、普通にフラットベッドでコピーを取るとノドに近い1行が写りません。館外貸出OKだったので、持って帰ってSV600にかけてみることにしました。

どーん! 
分厚い製本雑誌
撮影した資料は、『文藝倶楽部』第19巻第8号(1913年6月)から、著作権的に問題のなさそうな、後藤宙外(1938年没)の「褪紅」本文の1ページ目です。

ただ撮影するだけで、何も補正しない状態だと、こんな感じ。
分厚い資料をただスキャンすると
(1)の場合と同様、上の画像はウェブ掲載用にPDFからjpgに変換してリサイズしたものです。加工前の生のデータはこちら(181002scansnap2_2.pdf)からご確認ください。

読み込み後、最初に立ち上がる付属ソフトの画面がこちら。
読み込み後、最初の画面
諸般の事情で、ひとつ上の画像とは別に再度スキャンした結果を使っていますが、誌面が大きく歪んだ状態で撮影されていることに変わりはありません。厚みのないピース譜の場合、この時点のプレビュー画面ですでに、実用に耐えるレベルの画像が表示されているのですが、今回の資料だと、歪んだ読み取り結果から、単に最低限余白を切り取っただけ、のように見えます。「読み取り終了」で、補正画面に入ります。

まず、1枚ものの「平らな原稿」ではなく「見開き原稿」であることを指定してやった上で、さらに「イメージを確認/修正する」を選択して……
2つ目のウィンドウ

立ち上がったソフトの初期状態の画面がこちら。ノドの位置以外は自力では判断できなかったもよう。
補正ソフトの最初の状態

ページの端の6点すべてを手動で指定してやると、ページの輪郭は正しく認識されました。
ページの端を手動で決める

ここから「補正実行」を押して、出力された画像はこんな感じ。
補正結果!
実際のPDFファイルはこちらから(181002scansnap2_7.pdf)。今回も200dpiの「ファイン」モードです。

右ページは光源に近いせいか、白飛びしたみたいになってますし、ノドのあたりは文字が横方向につぶれ気味です。それでも、未補正の状態に比べたらノドの1行も格段に読みやすくなりました。判読できない文字はない。これ重要。挿絵や組版を審美的に云々する場面ではなく、単にテクストの内容が分かれば良い場合なら、わたしはこれで充分許容します。

より読み取り精度を上げたい人のためには、サードパーティ製で原稿を上から押さえるアクリル板が販売されています。それから、厚い資料の場合はスキャナを嵩上げして、カメラから資料までの距離を確保すると良い、というユーザレビューも読みました。わたし個人は必要性を感じないのでどちらも試していません。

というわけで、総じて非常に満足しているのですが、導入からしばらく、厚みの違うさまざまな資料をスキャンして、アプリの挙動をある程度予想できるようになるまでは、アプリの操作性にややイラッとくる場面もありました。とりわけ、読み取った画像のプレビュー、補正、ファイルに名前をつけて階層を指定して保存、の各段階で、その都度いちいち違うアプリが立ち上がる別なウィンドウが開く[2018/10/5 認識の誤りを修正]のは、やっぱりどうしても好きじゃないです。

スキャナのヘッドが動いている最中からゴミ箱行きが確定しているような画像ってあるじゃないですか。電源入れるだけのつもりが空の原稿台のスキャンを始めちゃったとか、スキャンボタンを押した瞬間にページが浮いちゃったとか……。そういう場合でも作業を途中で中断できず(方法はあるんだろうけど、ウィンドウ上に一目でそれと分かるようなボタンはない)、プレビュー〜補正〜リネームして保存、の各アプリツールをいちいち渡してやらないとファイルを捨てることさえままならないのは、特にキツいです。ウィンドウが開くのを待っている間、己の無能をしみじみ噛みしめることになります。

それから、わたしはMac OS X High Sierra (10.13.6)で使用しているのですが、これらのアプリが立ち上がっているときはMission Control周りの挙動がおかしくなって、別のアプリを最前面に持ってこられないようです(だから、この記事のためにスクリーンショットを撮るのは地味に手間取りました)。

とはいえ、それらが全部些細なことに思えるくらい、スキャナ本体の機能と補正の精度には満足しています。これならもっと早くに買っておくべきだった……となるのですが、今の仕事に就くまでは個人研究室なんて贅沢なものは持てなかったので、こんなの買っても置き場所ないし、と思っていたのです。いや、今ならこの機種が、自分のニーズを充分に満たしてくれるものだと分かったので、ちょっと無理してでも場所を作って常設しよう、という気にもなるのですが、可能性が未知数の段階ではなかなか手が出せませんでした。



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2018/10/01

富士通ScanSnap SV600礼讃(1): A3ノビサイズの原稿も読み込める

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富士通のオーバーヘッドスキャナ「ScanSnap SV600」を導入したら、研究生活が一変するレベルで便利だったので、見せびらかすだけのレビューを書きます。念のため断っておきますが、メーカーから金品の授受は受けておらず、身内に関係者もおりません。むしろ新機種の出そうなこのタイミングで、2013年発売のこのモデルを絶賛するとか、周回遅れにもほどがある。

購入の直接の動機は、「セノオ楽譜をスキャンしたい!」です。わたしは研究資料として、明治〜昭和戦前期の歌曲のピース譜を集めているのですが、これらの多くは見開きにするとA3サイズよりも一回り大きくなります。ということは、一般的な複合機でスキャンすると端が欠けます。もちろん、片面ずつスキャンすれば良いわけですが、そうすると、かかる時間は単純計算でも倍。実際には「原稿サイズを検知できません」みたいなエラーが出たり、偶数ページと奇数ページで手の向きを逆にしないといけなかったりで、体感だと3倍以上の時間がかかります。

見開きでA3サイズを超えるのは、現代の楽譜でも割とよくあることですが、その現代の楽譜に関しては、SV600で問題なく読めた、というレビューを発見。これが直接の決め手となって、この機種の購入を決めました。

とはいえAmazon等のレビューだと、画質への不満もちらほら書かれているので、そこが迷いどころではありました。でも、印刷物に引用するような機会があれば、改めてそのページだけフラットベッドでスキャンすれば良いのだから、自分が出先で資料を確認する用途に割り切って、大量の資料をとにかく手軽にスキャンできることを優先しました(……だったら、普通のフラットベッドスキャナでA3サイズの範囲内だけスキャンして、普段使いのデータには端が欠けてても割り切る、って考え方もあるのかもしれないけれど、下手したらページ番号が欠けちゃうかもしれないので、そこはやっぱ譲れません)。

で、どうなったか。実際の作業の様子をご覧ください。
ピース譜読み取り中
原稿台のマットに置いた資料は、北村季晴(1931年没)作歌作曲、『露営の夢』(1904年、弘楽社)の楽譜の1ページ目。先ほどシネクドキとして「セノオ楽譜」の語を持ち出したわけですが、ここで使用するサンプル画像がセノオ楽譜でないのは、主に著作権処理の問題です。

原稿サイズは約305mm×455m。原稿台の外側から2番目の印がA3(297×420mm)の横幅で、それより左右ほぼ約2cmずつはみ出しています。SV600のカタログ上の最大読取範囲はA3より少しだけ大きくて、それでも300×432mmなので、それを若干超過していることになりますが……。

読み取ってみると、資料の全体像が余裕で収まって、さらにこのくらいの余白(余黒?)が。
読み取り可能範囲
上に掲げた画像はウェブ掲載用にPDFからjpgに変換して大幅にリサイズしています[注:最初からjpgで保存することもできます]。読み取り結果のサンプルファイルはこの記事の後半に上げます。

ピース譜は厚みがないので、上からの撮影でもほとんど歪みが出ません。こうした原稿の場合は、読み取るとすぐに付属のソフトが自動で余白を切ってプレビュー画像を見せてくれます。そのまま保存してもそんなに問題はないのですが、一応「イメージを確認/修正する」を選択してみましょう。

そうして立ち上がる、画像補正用の別アプリの画面がこちら。
画像補正用画面
ビューアが立ち上がった時点ですでに各ページの端の6点が自動でマークされていて、切り取り位置を仮に決めてくれています。左ページ下辺のわずかな浮きが、正しくトレースされていることに注目。この場合は不要そうだけど、点の位置が気に食わなければ、ドラッグで修正も可能です。

この画面でもうひとつ嬉しいのが、上部のツールバーにある「出力形式」というボタン。見開きの状態でスキャンした原稿を、片面ずつ1ページとして保存ができて、しかも、左開きなのか右開きなのかを保存の段階で指定できるんです。わたし今年に入ってから、PDFビューワにするつもりで「Kindle Paperwhite」を買ったのですが、『国デコ』からダウンロードしてきたPDFは基本横長なので、画面が縦長固定のKindleで読むには不向きで、仮想プリンタを導入してページを半分に切ろうとしたものの、右開きの資料だと偶数ページと奇数ページの配列が逆になってしまって……で、結局ほとんど活用できずにいて、割と黒歴史になっているので。

閑話休題、先の補正画面から「補正実行」すると、こんな感じになります。
補正結果

実際に出力されたPDFファイルはこちら(181002scansnap1_4.pdf)。200dpiの「ファイン」モードで読み取ってPDFで保存。普段使いのデータとしてならこれで充分だけど、その気になればカラー600dpi/白黒1,200dpiまで設定可能です。

ここではペラ1枚でファイルにしたけど、PDF出力ができるということは、1冊全ページ丸ごとのデータを1ファイルにまとめて保存が可能です。

ページめくりを自動で検知して、2ページ目以降はボタン押さずとも勝手にスキャンを始めてくれる、という便利機能もあります。そういうプレッシャーのかかった状態で古い資料のページをめくるのは怖いので、普段は使っていません。でも、たまに現代の出版物を読み取る時に使った感じでは、「めくってないのにめくったと判断されちゃった」というエラーは全然なくて(「めくったのに検知されない」はたまにある)、かなり優秀。

もうこの時点でわたしにとっては買った甲斐があったんですが、この機種のすごさはそこでは終わらなかった。(2)に続く。

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