講演・口頭発表等

高温水中におけるステンレス鋼すき間内溶液導電率の上昇メカニズムに関する研究

腐食防食協会第65回材料と環境討論会
  • 相馬 康孝
  • ,
  • 小松 篤史
  • ,
  • 上野 文義
  • ,
  • 稲垣 博光*

開催年月日
2018年10月
記述言語
日本語
会議種別
開催地
富山
国・地域
日本

高温水中におけるステンレス鋼すき間内の溶液環境を知ることは、応力腐食割れ(SCC)のメカニズムを解明する上で重要である。われわれはこれまでに、溶存酸素を含む高温水中に浸漬したステンレス鋼のすき間内においては、すき間外(バルク水)が高純度水であっても、すき間内溶液の導電率($\kappa$crev)がバルク水のそれよりも最大で2桁以上大きい値を示すことを報告した。すき間内溶液導電率が大きく上昇することは、き裂先端部のアノード溶解挙動を、外界とのガルバニックカップリングの観点から理解する上で重要である。しかしながら、高純度水中において$\kappa$crevが上昇するメカニズムは明らかではない。そこで本研究では、外部環境因子として、バルク水の導電率と溶存酸素濃度を変化させ、$\kappa$crevの応答挙動を分析することにより$\kappa$crevの上昇メカニズムを考察した。温度288$^{\circ}$Cの高温高圧水中におけるSUS316Lステンレス鋼のすき間内溶液導電率($\kappa$crev)のDO濃度変動に対する応答挙動を、バルク水が純水および薬液添加状態で分析した結果、以下の結論が得られた。(1)$\kappa$crevは低DO濃度域(300ppb程度以下)では電位と共に上昇し、電位が$\kappa$crev上昇の駆動力と考えられた。一方、それ以上の高DO域では電位に対して単調増加とはならなかった。(2)$\kappa$crevの最大値はバルク水の導電率に関わらず、ほぼ一定値を示したことから、すき間内環境は何らかの平衡反応で決定されていると推測された。(3)バルク水が高純度の場合、DO濃度の上昇により$\kappa$crevはすき間の奥行きに依存せずほぼ同時に上昇した。このことから、鋼材そのものがアニオン源として寄与する可能性が推測された。

リンク情報
URL
https://jopss.jaea.go.jp/search/servlet/search?5064394