共同研究・競争的資金等の研究課題

2012年

精神科医の民事裁判への関与(鑑定、証言等)を促 進するための研究

民事紛争処理研究基金  

担当区分
研究代表者
配分額
(総額)
2,500,000円
(直接経費)
0円
(間接経費)
0円
資金種別
競争的資金

本研究では、被害者の権利擁護と円滑な裁判進行のために、精神科医の民事裁判に対するより積極的な関与をめざして、精神科医の積極的裁判関与に関する促進因子と忌避因子とを抽出することを試みた。
日本精神神経学会の会員名簿に基づき、会員の約10%を無作為抽出し、mail-to-mail法によって質問紙を送付・回収した。その結果、204通の回答を得た。回答率は30.3%であった。
成年後見制度に係る精神鑑定を除く民事裁判に関与(鑑定書、意見書の作成、法定での証言等)したことのある者は、回答者の40%であった。「民事裁判において当事者の精神状態(精神的被害を含む)を評価判定することを依頼された場合」には、“なるべく引き受けないようにしている”“原則として断る”と回答した者が回答者の51%にものぼった。
民事裁判に積極的に関与している精神科医はそうでない者に比して、司法精神医学関連の学会に所属し、関連の研修会に参加したことがあり、刑事精神鑑定の経験が多く、医療観察法の鑑定経験があり、裁判関与は医師としての社会的使命であると考えている割合が高かった。一方で、勤務経験・勤務形態、裁判に関する法的知識の多寡との連関は見られなかった。
以上から、精神科医の裁判関与を促進するためには、今後研修機会と適切な啓発の増大が必要であると考えられた。