MISC

2008年

高齢者における10m最大後向き歩行と運動能力の関係

理学療法学Supplement
  • 戸村 雅美
  • ,
  • 浦辺 幸夫
  • ,
  • 神里 巌
  • ,
  • 宮里 幸
  • ,
  • 宮下 浩二

2007
0
開始ページ
A0445
終了ページ
A0445
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.14900/cjpt.2007.0.A0445.0
出版者・発行元
公益社団法人 日本理学療法士協会

【目的】高齢者の歩行能力を含めた運動能力の評価は、健康維持において重要である。一般的に高齢者の運動能力は、10m最大歩行、開眼片脚立位、握力、下肢筋力などが測定される。臨床では、運動能力が低下した高齢者は後への歩行が困難となり、なかには大きくバランスを崩す例を経験する。この臨床経験から後への歩行が、運動能力のひとつである歩行能力・バランス能力を総合的に評価できる可能性があると考えた。本研究の目的は、高齢者における10m最大後向き歩行の有用性について一般的な測定項目との関係を明らかにすることとした。<BR>【方法】対象は外来通院中で自立歩行可能な高齢者34名(男性13名、女性21名)とした。年齢76.2±4.1歳、身長155.5±9.0cm、体重53.9±9.8kgであった。また歩行に支障をきたすような変形性膝関節症、変形性脊椎症などの骨関節疾患を有するもの、脳血管障害の既往があるものは対象から除外した。測定項目は、10m最大後向き歩行、10m最大歩行、開眼片脚立位、握力、30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30)とした。10m最大後向き歩行と10m最大歩行の統計学検定にはPeasonの相関係数を用い、10m最大後向き歩行および10m最大歩行と、開眼片脚立位、握力、CS-30の各要因の検定には重回帰分析(ステップワイズ法)を用いた。危険率5%未満を有意とした。本研究は、H大学大学院保健学研究科倫理審査委員会の承認を得て行われた。<BR>【結果】10m最大後向き歩行の平均時間は11.2±4.5秒、10m最大歩行は6.0±1.2秒、開眼片脚立位は45.3±42.2秒、握力は25.5±8.6kg、CS-30は18.4±4.2回であった。10m最大後向き歩行と10m最大歩行の間に有意な相関を認めた(r=0.69、p<0.01)。10m最大後向き歩行を目的変数とした結果、選択された因子は開眼片脚立位(p<0.05)、CS-30(p<0.01)であった。同様に、10m最大歩行を目的変数とした結果、選択された因子は握力(p<0.01)、CS-30(p<0.05)であった。<BR>【考察】歩行能力を反映しているとされる10m最大歩行と10m最大後向き歩行との間に相関を認めたことで、10m最大後向き歩行が同様に歩行能力を反映することが示された。また、10m最大後向き歩行との関連において開眼片脚立位とCS-30が選択されたことは、運動能力のなかでもバランス能力と下肢筋力を反映していると考えられる。一方、10m最大歩行では握力とCS-30が因子として選択され、筋力とのみ関連を認めたが、バランス能力と関連があるとの報告があることからも再検討の必要があると考える。本研究により、10m最大後向き歩行が高齢者の運動能力である歩行能力、バランス能力、筋力を総合的に評価できる可能性があることが示唆された。今後は対象数を増やしさらなる詳細な検討を行っていきたい。

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.14900/cjpt.2007.0.A0445.0
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130005014778
ID情報
  • DOI : 10.14900/cjpt.2007.0.A0445.0
  • CiNii Articles ID : 130005014778
  • identifiers.cinii_nr_id : 9000283759655

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