講演・口頭発表等

2014年

歩行時床反力と足部アーチ構造荷重応答能の関係

理学療法学Supplement
  • 土居 健次朗
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  • 遠藤 辰明
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  • 河原 常郎
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  • 大森 茂樹
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  • 倉林 準
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  • 吉岡 伸彦

記述言語
日本語
会議種別

【背景・目的】足部は直立2足歩行において唯一床面と接する部位であり,床反力として直達外力を受ける。床反力は足底が地面に接地している間に床に加わる力と同等の反力を前後・左右・上下への分力として導出される。足部の複雑な構造は床反力を分散させる機構を備えており,主に3つのアーチ構造を特徴とする。我々は第47回本学会にて足部内側縦アーチと歩行時COP軌跡との関連性について示した。第48回本学会では若年層の足部形態が荷重による影響を大きく受け,その影響は足趾屈曲筋力と関係があることを示した。本研究の目的は足部アーチ構造の荷重応答能と歩行各相における床反力との関係を検証することである。【方法】対象は下肢に整形外科的及び神経学的疾患を有しない健常成人男性21名とした(平均年齢:25.9±2.5歳)。使用機器は,VICONMX(Vicon Motion System:カメラ7台,200Hz),床反力計(AMTI:2台,200HZ),非接触三次元足形計測装置INFOOT USB Standardtype(以下INFOOT,型番IFU-S-01,I-Ware Laboratory社製)を使用した。足部アーチ構造の指標はINFOOTにて得られたデータより内側縦アーチ高率(MAR),外側縦アーチ高率(LAR),横アーチ高率(TAR)を以下のように定義した。[MAR=(舟状骨高)/(足長)×100],[LAR=(インステップ高)/(外踏まず長)×100],[TAR=(足囲高)/(足幅)×100]。測定肢位は,端座位にて荷重の影響を除いた肢位(以下,端座位)と荷重を左右等しく加えた両側立位(以下,立位)の2通りとした。足部アーチ構造の各指標は荷重による影響を受けるため,その影響を足部荷重応答能とし,以下のように定義した。立位,端座位それぞれのMAR,LAR,TAR計測結果を[(立位)/(端座位)/体重×100]に当てはめLMAR,LLAR,LTARとした。歩行計測は7mの自然裸足歩行を3回計測した。マーカは全身の13体節に35個を貼付した。歩行データの計測区間は右立脚期とし,支持基底面が変化する両脚支持前期(Doublesupport:DSI),片脚支持期(Single support:SS),両脚支持後期(DSII)で相分けした。解析はSSにおける床反力左右成分の軌跡が2峰性を示した群と多峰性を示した群で分け各群の足部荷重応答能の特徴を検討した。統計学的解析は2元配置分散分析を行った。多重比較はbonferoni法を用いた。有意水準は5%未満とした。また,荷重応答能と各相における床反力各成分の積分値との相関を検証した。【倫理的配慮】所属施設における倫理委員会の許可を得た。対象には,ヘルシンキ宣言をもとに,保護・権利の優先,参加・中止の自由,研究内容,身体への影響などを口頭および文書にて説明し同意が得られた者のみを対象に計測を行った。【結果】床反力左右成分の軌跡が2峰性群は10名,多峰性群は8名となり,残り3名は1峰性の波形となり検討対象から除外した。有意な群間差は認められなかった。群内因子において2峰性群は有意にLMARよりもLLAR,LTARの方が大きかった。(P<0.05)荷重応答能と各相における床反力各成分の積分値との相関はLMARとSS上方向成分(R=0.77),LLARとSS上方向成分(R=0.93),LTARとSS上方向成分(R=0.63),LMARとDSII前方向成分(R=-0.53),LLARとDSII前方向成分(R=-0.54)に有意な相関が認められた。(P<0.05)【考察】本研究は足部アーチ構造における荷重応答能が歩行各相の床反力へ与える影響を検証することであった。複雑な足部構造を3つのアーチ高率で指標化することは有効であり,それぞれが特有の機能を有していることが示唆された。また,足部の荷重応答能は足部の機能をみる上で重要な指標だと考えた。本結果よりSSは接地している足部の状態の影響を強く受けることが示唆された。また,単に一つの指標のみではなく3つの荷重応答能の関係性がSS左右成分のコントロールに重要であることを示した。歩行における左右成分は効率的な歩行の妨げとなる。効率的に歩行を行うために足部はロッカー機能を有している。これは単に構造的に備わっているものではなく,これを最大限活かすための荷重応答能が必要だと考えられた。【理学療法学研究としての意義】歩行中の人が受ける外力は重力と床反力のみである。床反力制御は身体に加わる重力を制御することであり転倒予防や障害予防にとって重要である。足部アーチ構造は荷重や筋力,履物の影響などで変化し得る。今回,足部アーチ構造より歩行中の床反力を推定できることを示唆した。今後は対象者数,対象年齢,対象疾患を広げ更なる検証を行っていく必要がある。

リンク情報
URL
http://ci.nii.ac.jp/naid/130005246612
DOI
https://doi.org/10.14900/cjpt.2013.0468