講演・口頭発表等

2013年

荷重時の内反小趾角増大群における足部形態の特徴

理学療法学Supplement
  • 遠藤 辰明
  • ,
  • 土居 健次朗
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  • 大森 茂樹
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  • 河原 常郎
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  • 倉林 準
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  • 門馬 博
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  • 八並 光信

記述言語
日本語
会議種別

【はじめに、目的】 足部は身体の中で地面と唯一接触している部位であり、身体制御に重要な役割を担っている。入江らによると、内反小趾角と踵骨外反傾斜の増大は重心動揺の増大に関与するとした。臨床現場において、外側不安定性に対する小趾機能低下は、よく経験することである。外側不安定性を呈する場合は小趾の機能改善により重心動揺を軽減でき、内反小趾角増大を抑制することが一つの手段であると考えられた。外反母趾の特徴を検討した報告は多数みられるが、内反小趾角が増大する者の特徴を検討した報告は少ない。今回、荷重時の内反小趾角の増大がその他の足部形態に与える影響を検証した。【方法】 対象は平成24年7月から10月に当院に来院された足部に変性疾患のない57名113足(男性25名、女性32名、年齢43.8±22.2歳)とした。足形計測には(株)I-ware Laboratory社製のINFOOT USB Standard type(IFU-S-01)を使用した。計測肢位は片脚立位(荷重位)と座位(非荷重位)にて行った。片脚立位では、上肢での支えをありとして、非検査側の股・膝関節軽度屈曲位にて地面に接地しない程度に浮かせて保持させた。座位では、股・膝関節屈曲90°位、股関節内外転中間位、足関節中間位で保持させた。計測項目は足長、足幅、足囲最高点、第1趾側角度、第5趾側角度、舟状骨点高、踵骨傾斜角とし、計測した数値から内側縦アーチ高率(舟状骨点高/足長×100)、横アーチ高率(足囲最高点/足幅×100)を算出した。第1趾側角度、舟状骨点高、踵骨傾斜角、内側縦アーチ高率、横アーチ高率の荷重位と非荷重位の差分を体重で正規化し、各項目の定数を算出した。各項目を第5趾内反群(以下、内反群)と第5趾外反群(以下、外反群)の2群に分けた。解析は各項目の群間差を2元配置分散分析にて検証した。有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 所属施設における倫理委員会の許可を得た。対象には、ヘルシンキ宣言をもとに、保護・権利の優先、参加・中止の自由、研究内容、身体への影響などを口頭および文書にて説明し同意が得られた者のみを対象に計測を行った。【結果】 横アーチ高率定数は内反群-0.03±0.03、外反群-0.04±0.05、舟状骨高定数は内反群-0.05±0.06、外反群-0.09±0.11、第1趾側角度定数は内反群-0.003±0.06、外反群は0.03±0.05、内側縦アーチ高率定数は、内反群-0.03±0.03、外反群-0.04±0.05であった。横アーチ高率定数のみ有意差を認めた(p<0.05)。内反群は外反群に比べて横アーチ高率定数の低下が大きかった。【考察】 本研究より、内反群と外反群において横アーチ高率の間に差が認められた。今井らは外反母趾罹患者の研究で、外反母趾角がLeg Heel Alignmentとの間に負の相関、横アーチ長率との間に正の相関があると報告した。同様に第5趾側角度が踵傾斜や横アーチと関係すると推測したが、本研究では踵傾斜との関係は認められなかった。第1列と踵は運動連鎖による相互関係が強く、第5列と踵は運動連鎖による相互関係が弱いことが示唆された。また、横アーチの低下は内反小趾角の増大に関与することが示唆された。横アーチは左右方向へのバランスの維持に関与する。入江ら、熊王らは第5趾側角度と重心動揺に正の相関があることを示した。荷重は横アーチを低下させるため、第5中足骨外転、第5基節骨内転に作用し、第5趾側角度が増加したと考えた。よって、左右方向へのバランス能力向上には横アーチの保持に加え、小趾屈筋などの第5趾へのアプローチが重要であることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】 重心の左右動揺は足関節内反捻挫発症のリスクとなる。今回、荷重により第5趾側角度増大や横アーチの低下が起こることが示唆され、これらは左右重心動揺の増大因子と考えられた。今後は、第5趾内反群・外反群と重心動揺との関係を追究すること、捻挫発症者での検証することが必要であった。そして、第5趾に対するアプローチから足関節捻挫の予防に繋げていきたいと考えた。

リンク情報
URL
http://ci.nii.ac.jp/naid/130004586120
DOI
https://doi.org/10.14900/cjpt.2012.0.48102037.0