共同研究・競争的資金等の研究課題

2017年5月 - 2022年3月

犠牲結合原理が導く戦略:金属を凌駕するソフト・ハード複合強靭材料の創製と機能開拓

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(S)  基盤研究(S)

課題番号
17H06144
担当区分
研究代表者
配分額
(総額)
204,100,000円
(直接経費)
157,000,000円
(間接経費)
47,100,000円

本年度は主に、ハードマター相の犠牲結合が複合材料の強靭化に及ぼす効果を解明した。最初に、mmスケールの多様な二次元長方格子(犠牲結合)を設計し、高性能3Dプリンターによって作製した。次いで、高靱性の柔らかい材料をマトリックス相として格子と複合させ、巨視的なスケールでのダブルネットワーク複合体を創製した。二次元格子の骨格の太さを制御した実験より、引張試験における多段階の格子の破断(すなわち犠牲結合原理の発現)は、二次元格子の強度がマトリックスの強度を上回った場合に生じることが分かった。また格子の節の数を制御した実験より、節の数を増やすほど引張試験時における格子の破断イベント数が増えるために材料が強靭となるが、強靭性はある一定の値で頭打ちになることが分かった。さらに多様な材質による二次元格子を検討した結果、どのような材質を用いても複合材料は強靭になったことから、格子の化学的性質(例えば表面の接着性)は強靭化に大きな影響を及ぼさず、格子とマトリックスの力学物性の関係性が強靭化度合の決定の主要因であることが明らかとなった。
次いで、多様な二次元・三次元格子を設計し、格子のポアソン比を変化させた複合材料を創製した。骨格として、具体的には負のポアソン比を持つオーセチック構造や、正のポアソン比を持つハニカム構造などを用いた。引張試験結果より、複合材料の強度は格子とマトリックスのポアソン比のミスマッチが大きいほど高くなることが示唆された。偏光顕微鏡観察の結果、本現象は、複合材料の変形時、ポアソン比のミスマッチによりマトリックスが局所的に(巨視的な変形よりも)極めて大きく変形することによって引き起こされていることが示唆された。また、ポアソン比のミスマッチによりマトリックスが(通常では起こりえない)体積変形を強いられることも原因の1つではないかと考えられ、現在検証を進めている。

リンク情報
URL
https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-17H06144/17H06144_saitaku_gaiyo_ja.pdf
URL
https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-17H06144/17H06144_saitaku_shoken_ja.pdf
ID情報
  • 課題番号 : 17H06144

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