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2019/10/15

「八ッ場ダムが氾濫防止に」発言が示唆する自民党の「政権党であることへの強い欲求」

Tweet ThisSend to Facebook | by suzumura

10月12日(土)から13日(日)にかけて東日本を縦断した台風19号は、現在も各地に甚大な被害を与えたままです。


今回は、河川の氾濫や堤防の決壊など、これまで政府が取り組んできた治水事業の限界が示される結果となりました[1]。


その一方で、一部には、群馬県長野原町の八ッ場ダムが河川の氾濫防止に役立ったとの指摘もあり、自民党の中には「民主党政権のときに(ダム建設が)ストップされて本当にひどい目にあった。われわれが目指してきた方向は正しかった」という意見もあります[2]。


確かに、八ッ場ダムは10月1日(火)にダムに水をためて安全性を確かめる試験湛水が始まったばかりでした[3]。


そのため、結果的にダム上流の群馬県嬬恋村田代で観測史上1位となる48時間で442ミリの降雨を記録するなど、記録的な豪雨[4]であったにもかかわらず、八ッ場ダムが貯水機能を発揮して下流の増水の抑止に一定の効果を発揮したことが推察されます。


しかし、たとえ八ッ場ダムの建設の中止が民主党政権時代に行われたとはいえ、建設の再開を決定したのは政権党に復帰した後の自民党ではなく、他ならぬ民主党でした。


「政権公約(マニフェスト)が実現性に乏しかったことが裏付けられた形」[5]であったことは事実ながら、「われわれが目指してきた方向は正しかった」という表現は、八ッ場ダムの建設の再開を決断したのが民主党であったという事実を軽んずるものになりかねません。


今年7月には安倍晋三首相が「『コンクリートから人へ』は無責任」と発言し、民主党に政権を奪われたことへの負い目や劣等感を示唆したように[6]、今回の自民党議員の指摘も、自民党の下野時代の悲哀を八ッ場ダムの建設中止の問題に仮託していると言えるでしょう。


今も「悪夢のような民主党政権」[7]といった発言がなされることとあわせて、自民党に所属する国会議員の政権党であることへの執着心の強さを推察させる、「八ッ場ダム発言」ではあります。


[1]台風、21河川で堤防決壊. 日本経済新聞, 2019年10月14日朝刊1面.
[2]【台風19号】自民が対策本部会合 「八ッ場ダムが氾濫防止に」の報告も. 産経新聞電子版, 2019年10月15日, https://www.sankei.com/affairs/news/191015/afr1910150015-n1.html (2019年10月15日閲覧).
[3]八ッ場ダム、試験湛水始まる. 毎日新聞, 2019年10月1日夕刊6面.
[4]八ツ場ダム、一昼夜でほぼ満水. 朝日新聞デジタル, 2019年10月14日, https://www.asahi.com/articles/ASMBF55ZJMBFUHNB01N.html (2019年10月15日閲覧).
[5]目玉公約また撤回. 読売新聞, 2011年12月23日朝刊4面.
[6]鈴村裕輔, 「『コンクリートから人へ』は無責任」発言が示唆する安倍首相の「民主党政権への負い目」. 2019年7月13日, https://researchmap.jp/jov8ype5w-18602/.
[7]首相演説要旨. 読売新聞, 2019年2月11日朝刊4面.


<Executive Summary>
Emphasising a Meaning of Yamba Dam Implies the LDP's Strong Desire to Be an Administrative Party (Yusuke Suzumura)


A parliament menber of the Liberal Democratic Party (LDP) points out that building Yamba Dam is adequate policy to avoid serious damage by the Typhoon Hagibis on 15th October 2019. It implies that members of the LDP have a strong Desire to maintain the position of the administrative party, since the statesperson emphasises that a policy to stop building the dam was adopeted under the Democratic Party of Japan administration.


 


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