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2014/08/03

論ずるに足りない西村欣也氏の随筆「江夏復権、多様な議論を」

Tweet ThisSend to Facebook | by suzumura

8月2日(土)、朝日新聞はスポーツ欄に西村欣也氏の随筆「江夏復権、多様な議論を 殿堂から遠ざかり21年」を掲載しました1


1960年代から1980年代前半にかけて日本のプロ野球界を牽引してきた江夏豊氏は1993年3月2日に覚せい剤所持の現行犯で逮捕されて実刑判決を受け、野球殿堂入りの対象選手から除外され、引退後21年以上を経過したために「プレーヤー表彰」の可能性がなくなっており、個人的には「エキスパート部門」に登録してもよいと思うものの、関係者のみで決めるのではなく、野球ファンの多様な議論が必要だと思う、というのが、西村氏の随筆の趣旨です。


確かに、「引退後5年を経過してその後15年間」というプレーヤー表彰の規程2からも、江夏氏がプレーヤー表彰の対象になることはありませんから、「現役を引退したプロ野球選手で、引退後21年以上経過した人」と規定されるエキスパート表彰3によらなければ野球殿堂に表彰されることはありません。


また、覚醒剤を所持していたことは反社会的行為であるが野球に関してやましいことはしていない、だから殿堂入りの対象になってもよいだろう、という西村氏の論法1も、刑期を終えて課された罪を償ったという点からも、一定の合理性を有するといえるでしょう。


しかし、西村氏の「個人的にはエキスパート部門でノミネートしてもいいと思う。ノミネートされれば、投票するのは幹事と野球殿堂に入っている人物ということになる。が、この件に関しては密室で会議、投票するのではなく、野球ファンの多様な議論が必要だと思う」という見解は賛同しかねるものです。


何故なら、エキスパート表彰の選出方法は「殿堂入りした人(約30名)、競技者表彰委員会の幹事と野球報道年数30年以上の経験を持つ委員(約70名)が投票。75%以上得票した人が殿堂入りとなる」と明記されているのですから3、これ以外の方法によって選ばれる必要はなく、ましてや「野球ファンの多様な議論」を経る必然性がどこにもないことは明白だからです。


しかも、野球殿堂入りした者と幹事の投票も明文化された行為なのですから、「密室で会議、投票する」行為と称される正当な理由はありません。


もし、江夏氏をエキスパート表彰の対象にしたいと考えるのであれば、そのように考え、幹事でもある西村氏が実際に提議し、候補者とするよう努力すればよいだけの話です。


実際には「平成26年 第54回競技者表彰委員会エキスパート表彰候補者名簿」に江夏氏の氏名が掲載されていないことから4、西村氏ないし他の関係者が提議したものの承認されなかったか、あるいは周囲からの批判を懸念して西村氏が提議を行わなかったことが推察されます。


江夏氏がエキスパート表彰の候補者にならない理由がどのようなものであれ、西村氏は選考の権利を有する関係者の多数の意見に従うべきであって、自らの立場の弱さを補強するために「野球ファンの多様な議論」を利用しようとするのであれば、たとえそれが「現役引退後にプロ野球界にタッチしていないOBに冷たいのが野球殿堂の壁」5を打ち破る試みであるとしても、事柄の本質と末節を転倒させる行動となるでしょう。


西村氏が事柄を情緒的に捉え、論理的な厳密さを持つ議論を行うことを得意としない点については、これまでにも本欄の指摘するところです6,7


今回の随筆は、そのような西村氏の欠点が現れた、典型的な事例といえるでしょう。


1 西村欣也, 江夏復権、多様な議論を 殿堂から遠ざかり21年. 朝日新聞, 2014年8月2日朝刊18面.
2 プレーヤー表彰. 野球体育博物館, 掲載日不詳, http://www.baseball-museum.or.jp/baseball_hallo/summary/index.html (2014年8月3日閲覧).
3 エキスパート表彰. 野球体育博物館, 掲載日不詳, http://www.baseball-museum.or.jp/baseball_hallo/summary/index.html (2014年8月3日閲覧).
4 平成26年野球殿堂入り 競技者表彰候補者発表. 日本野球機構, 2013年11月29日, http://www.npb.or.jp/museum/news20131129.html (2014年8月3日閲覧).
5 蛭間豊章, 3人のEさんの殿堂入りを. 蛭間豊章のBaseball inside, 2008年2月29日, http://weblog.hochi.co.jp/hiruma/2008/02/post-b7d5.html (2014年8月3日閲覧).
6 鈴村裕輔, 西村欣也氏の随筆「野球の底力 ここまできた」は紙面を割くに値するか. 2011年7月26日, http://researchmap.jp/jo0ohslvx-18602/.
7 鈴村裕輔, 西村欣也氏の論理的信頼性の低い随筆「お家騒動で終わらせるな」. 2011年11月21日, http://researchmap.jp/jogrunjox-18602/.


<Executive Summary>
Don't Believe and Trust the Essay on Mr. Yutaka Enatsu and the Problem of the Baseball Hall of Fame Written by Mr. Kinya Nishimura (Yusuke Suzumura)


The Asahi Shimbun run an essay written by Mr. Kinya Nishimura concerning on Mr. Yutaka Enatsu, a former pithcer of Japanese professional baseball, and the election of Baseball Hall of Fame on 2nd August 2014. As usual Mr. Nishimura's argument is the alogical and posses lower reliability.


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