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2019/10/14

石橋湛山の議論から考える「台風19号後の防災対策のあり方」

Tweet ThisSend to Facebook | by suzumura

10月12日(土)から13日(日)にかけて東日本を縦断した台風19号は、10月14日(月、祝)0時現在で死者35人、行方不明者17人を数え、21の河川で堤防が決壊するなど、各地に大きな被害をもたらしています[1]。


台風19号がもたらした被害は10月の東日本地域としては異例ではあったものの、気候変動により、台風の強大化や豪雨の頻発が予想されるだけに、今後も同様の事象の発生が増えることはあっても、減少する可能性は高くありません。


そのため、今後、防災対策として堤防の巨大化が議論されることになるでしょう。


しかし、将来発生する台風の規模を事前に予測することは不可能であるだけでなく、一旦建設された堤防を維持するための人的資源や費用の捻出も現実的な課題となります。


しかも、「喉元過ぎれば熱さ忘れる」の俚諺にあるように、どれほど甚大な被害をもたらした台風19号であっても、直接の損害を受けた場合を除けば、多くの人にとって10日後には「過去の出来事」となることでしょう。


それでは、われわれはこれからの防災対策にどのように取り組めばよいのでしょうか。


ここで思い出されるのが、1923年に起きた関東大震災を受けて石橋湛山が執筆した『東洋経済新報』の社説「此經驗を科學化せよ」です[2]。


すなわち、「此災害は、隨分苦き經驗ではあつたが、併し之を善用すれば、所謂禍を轉じて福となすの道は多いのである。」と東京を中心に各地に甚大な被害をもたらした関東大震災という苦い経験を善用することを説く石橋は、次のように述べます。


然らば之を善用する法如何。そは唯だ此經驗を科學化するあるのみ。何となれば總ての經驗は、之を科學化してのみ、其意味を正確にし、將來に利用し得る形ちとして保存し得るからである。(中略)交通、通信、警察、教育、行政、其他殆どあらゆる物質的、精神的施設が、今囘の震災火災に依りて、根本的に搖り動かされたのである。其等はいづれも、此經驗を取入れて科學化せられねばならない。


石橋の言う「科学化」とは勘や経験、当て推量など、個人に依存する方法や、現在の利益の増進のみを目的とする手法ではなく、誰が行っても同じ結果が得られる、合理的で標準化され、将来にわたって公共の福祉に寄与する方法を意味します。


もとより、関東大震災と台風19号の被害を比較することは適切ではありませんし、1923年当時と2019年とでは防災対策も根本的に異なります。


それでも、堤防の増強と言った、当座の被害をしのぐことは出来ても、将来的な対策とはなり得ない方法のみに依存することを戒め、より合理的な防災あるいは減災ないし抑災の方法を検討し、実用化するためには、石橋の考えにも一定の価値があることでしょう。


「畢竟日本國民は、わつと騒ぎ立てることは得意だが、落ち着いて善く考へ、協同して靜かに秩序を立て、地味の仕事をすることには不適任である。」という指摘[2]とあわせて、われわれに求められているのは、今後のよりよい防災対策を考えることなのです。


[1]台風、21河川で堤防決壊. 日本経済新聞, 2019年10月14日朝刊1面.
[2]此經驗を科學化せよ. 東洋経済新報, 第1067号, 1923年, 10面.


<Executive Summary>
What Kind of Disaster Prevention Shall We Examine after the Typhoon Hagibis?: Based on a Discussion by Ishibashi Tanzan (Yusuke Suzumura)


The Typhoon Hagibis (19th Typhoon) landed and acrossed the mainland of Japan on 12th October 2019. On this occasion, we have to examine better and rational solutions for disaster prevention.


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