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2013/04/08

(12)広島市北西山間部「黒い雨」放射能トラウマPTSD2例目

| by サイコドクターS
「長期治療患者がパロキセチン服用後に広島原子爆弾による北西山間部黒い雨を浴びたトラウマを想起した複雑性PTSDの一例」
2012年108回日本精神神経学会総会:札幌

症例は70歳代男性。30歳頃より精神科入院を繰り返し、50歳頃より就労不能となった。陰性症状を主とした統合失調症として独居で自閉的な生活を送っていた。X-1年より構語障害改善のためハロペリドールからリスペリドンに変薬した。Xー1年12月~X年3月、X年7月~12月、X+1年1月~と意欲低下のため入院を繰り返した。オランザピンへの変薬やハロペリドールへの復薬も効果はなかった。4月よりふらつきなど心気的な訴えが多くなり、抗不安効果を期待してパロキセチン10mgを処方した。5月になると患者が6歳時に疫痢で死亡した2歳下の弟のことを思い出し話すようになった。7月には広島市北西山間部に降った黒い雨を浴びたことを思い出した。9月には看護婦だったいとこが市内で被爆して1週間で亡くなったことを思い出した。それまでの長い治療歴で被爆について語られたことはなかった。これまでの複雑性PTSDの治療経験と同じく、患者との親密な関係(ラポール)形成後にSSRIが抑圧・解離された病原外傷記憶(トラウマ)を想起させる点では一致している。演者がlこれまで発表した「東京大空襲被災と広島原子爆弾被爆の両方を経験し複雑性PTSDを呈した一例」(広島医学2006)や「児童期に広島市北西山間部で原爆による黒い雨を浴びた複雑性PTSD患者にタンドスピロンとSDAが著効した一例」(2010年106回日本精神神経学会総会:広島)などの原爆PTSD症例との共通点としては、被爆者のトラウマは個人的な外傷体験(父親の戦前の結核死、兄弟で一人だけの山間部疎開)と原爆放射能被害への恐怖感の複合体である。前者の正常な悲哀感の表出は想起により可能であっても、後者の当然あるべき恐怖感の表出は抵抗を示し困難であった。この知見は福島原発放射能PTSDの診断・治療に生かすことができる。
00:25 | 報告