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2017/07/19

【追悼文】加来彰俊先生とのいくつかの思い出

Tweet ThisSend to Facebook | by suzumura

7月18日(火)、午前1時35分に法政大学文学部名誉教授でギリシア哲学の研究者の加来彰俊先生が逝去されました。享年94歳でした。


加来先生は日本におけるギリシア哲学研究の泰斗であった田中美知太郎門下の俊英として知られ、弘前大学を経て1993年3月まで法政大学文学部哲学科教授を務められました。


私が法政大学文学部哲学科に入学した1996年はすでに加来先生が退職された後ではあったものの、哲学科にとって重要な方であったことは、加来先生の後継としてギリシア哲学の講座を担当された奥田和夫先生や、当時西洋哲学史Iの講義を担当されていた川田親之先生の話から容易に推察することが出来ました。


特に、川田先生は西洋哲学史Iの講義の中で、「これは大変ためになるから、読んでおくといいですよ」と、1994年に最終巻が刊行されたばかりの、、加来先生が翻訳されたディオゲネス・ラエルティオスの『ギリシア哲学者列伝』全三巻(岩波書店、1984-1994年)を推薦してくださいました。


『ギリシア哲学者列伝』は1984年に上巻、1989年に中巻、1994年に下巻が出版され、タレスからエピクロスに至るまでの古代ギリシアの哲学者たちの事績を網羅的に描いた書物であり、加来先生の平易ながら緻密な翻訳によって初学者にとっても読み応えのある内容となっていました。


とりわけ註の充実さは目を見張るものがあり、悪妻といわれたクサンティッペとソクラテスの間柄も、ソクラテスが「私がりんごを投げるから、もし私のことを愛しているのなら受け止めて」とクサンティッペに呼びかけたように決して悪いものではなかったというディオゲネス・ラエルティオスの書きぶりとともに、大変印象深いものでした。


残念ながら私が加来先生の講義を直接伺うことはなく、お住まいを千葉県から関西に移されてからは法政哲学会でお目にかかる機会も乏しかったとはいえ、数年に一度法政哲学会の大会でお姿を拝見すると、小柄で温和な雰囲気のまま研究報告の際に発表者に対して事柄の核心を突く質問をされていたことは、加来先生の学問への姿勢がそのまま現れているかのようで感慨深く思われました。


私がギリシア哲学に興味や関心を抱いた最大の契機は川田先生や奥田先生の謦咳に接したことです。それとともに、加来先生が訳出された『ギリシア哲学者列伝』やプラトンの『法律』、あるいは『ソクラテスはなぜ死んだのか』(岩波書店、2004年)などの著作は、私がギリシア哲学の知識を広めるためには不可欠なものでした。


加来先生の学恩に感謝申し上げるとともに、ご冥福をお祈りいたします。


<Executive Summary>
Memory for Professor Emeritus Akitoshi Kaku (Yusuke Suzumura)


Professor Emeritus Akitoshi Kaku had passed away at the age of 94 on 18th July 2017. Professor Kaku is one of the most remarkable scholars of ancient Greek philosophy in Japan and his translation of Diogenes Laërtius' Lives of Eminent Philosophers is memorable achievement of his efforts.


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