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2016/10/03

【評伝】ネヴィル・マリナーさん――時代を画した音楽家

Tweet ThisSend to Facebook | by suzumura

現地時間の10月2日(日)、指揮者でヴァイオリン奏者のネヴィル・マリナーさんが死去しました。享年92歳でした。


ロンドン王立音楽院とパリ音楽院でヴァイオリンを学んだマリナーさんは、19歳で第二次世界大戦に従軍して負傷し、入院先で終戦を迎えるとともに、7歳年長の兄も日本軍の捕虜になる経験を持っていました。また、1946年には連合軍の絨毯爆撃により壊滅的な被害を受けたドレスデンで演奏し、瓦礫の中から音楽を聞きたいという人が集まる様子に、音楽が持つ人々を前向きにさせる力を実感しました。


その後、ヴァイオリン奏者としてフィルハーモニア管弦楽団とロンドン交響楽団に在籍し、ロンドン響では第二ヴァイオリンの首席奏者を務めました。


この間、ピエール・モントゥーに指揮を師事し、アルトゥーロ・トスカニーニ、ヴィルヘルム・フルトベングラー、ヘルベルト・フォン・カラヤンの下で研鑽を積み、1959年にジ・アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ(The Academy of St. Martin-in-the-Fields: AMSF)を結成し指揮者としての活動を始めました。


アカデミー室内管弦楽団の名で知られるこの楽団は、元来ロンドンのトラファルガー広場にある線と・マーティン・イン・ザ・フィールズ教会で初めて演奏会を行ったことにちなんでおり、当初は6回の演奏会を行って解散する予定でした。


しかし、従来のチェンバー・オーケストラのチェンバー(室内)という響きが聞き手を押しやるような印象を持つことを嫌ったマリナーさんが、「学術的」ではなく、ソサエティやクラブのような「同好会的な集まり」の意味としてのアカデミーの語を採用したことが奏功したのか、AMSFは現在に至るまで活動を続けています。


AMSFでの活動に加え、1969年にロサンゼルス室内管弦楽団の音楽監督に任命されたことを機に指揮者に転向したマリナーさんは、「歌劇と現代音楽以外は何でも振る」といわれるほど多くの曲を指揮し、ミネソタ管弦楽団音楽監督(1979-86年)やシュトゥットガルト放送交響楽団音楽監督(1986-89年)を歴任し、イギリスを代表する指揮者として活躍しました。


1972年に初めて来日し、1979年にNHK交響楽団の定期公演を指揮したマリナーさんは、映画『アマデウス』(原題:Amadeus、1984年)の音楽をAMSFが担当し、自らも指揮と音楽監督を務めたことを契機に日本でも名前が広く知られるようになり、NHK響以外にも札幌交響楽団の定期演奏会などにも出演しました。


一方、マリナーさんは「作曲家ごとのカタログをつくりたいというレコード会社の依頼を何となく受け」、作曲家の全曲集の録音を行ったことで世界的に全曲録音が流行するとともに、マリナーさん自身もグノーやビゼーの音楽の価値に開眼するようになりました。


マリナーさんとAMSFの活動はフランス・ブリュッヘンやニコラス・アーノンクールらの古楽の運動が高まりを見せた時期ではあったものの、いわゆるピリオド奏法を活用するよりは現代的な表現に徹する傾向が強いものでした。また、マリナーさん自身も、音の入り方の統一感が高い、明晰な演奏を志向したことで、軽快な音を生み出すことに成功したことは、大編成の楽団でも古楽や室内楽の知見を取り入れる最先端の演奏に比べるとやや古めかしく思われるとはいえ、独自の色合いを持っていました。


テニスによって健康を維持するマリナーさんは、今年4月にはアカデミー室内管と28年ぶりに来日して第54回大阪国際フェスティバルに出演するなど、文字通り生涯現役の指揮者として活動しました。


演奏会や録音などを通じて多くの作曲家の作品を後世に伝えることに成功したマリナーさんは、決して派手ではないものの、交響管弦楽の世界に一時代を画した音楽家であったと言えるでしょう。


<Executive Summary>
Critical Biography: Sir Neville Marriner, a Prominent Musician of Our Age (Yusuke Suzumura)


Sir Neville Marriner, a conductor and violinist, had passed away at the age of 92 on 2nd October 2016. His activites with the Academy of St. Martin-in-the-Fields is very prominent in the field of classical music.


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