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2015/03/24

数学の言葉で世界を見たら

Tweet ThisSend to Facebook | by Takebe
先日出版されたばかりの大栗博司著「数学の言葉で世界を見たら」(出版社のページ付録のページ)を大栗先生よりご恵贈頂きました。ありがたく拝受いたしました。

ロシアは郵便事情が悪いので、普通に航空便で本を送ったら何週間かかるか分かりませんし、ことによったら更に税関に引っかかって遅れるとかいうことがありえますが(実際にありましたが)、出版元の幻冬舎の担当の方がその辺の事情をご存知だったのか、EMS で送って下さったので5日程度で無事に着きました。

何故大栗先生が私なんぞに新刊を下さったかと言うと、あとがきで触れられている通り、実は原稿の段階で拝見して若干のコメントをさせて頂いたためです。それではなんでまた原稿を読ませて下さったのか、と言うと、この本の元となった web 連載があった時に大栗先生の web page の方でちょっとコメント(というより茶々)を入れたことがあり、本の原稿が出来た段階で「武部さんは web 連載を読んでいたから」ということでご指名下さったのだと思います。私も大栗先生には昔からお世話になりっぱなしですので、少しでもお役に立つならとありがたく拝読させて頂きました。

大栗先生の事を初めて聞いたのは私が東大数学の修士の頃で、大栗先生が京大の修士を卒業してすぐに東大の物理の助手として来られた時でした。当時は超弦理論や共形場理論で代数幾何や整数論、無限次元 Lie 代数などなど「こんな数学も物理で使えるんだ」と(当時は)驚かれるような分野の数学が活躍し始めた頃。そうした高度な数学を駆使して物理の最先端の研究をしている大栗先生は数学科の一部の院生達から「数学者より数学知ってる」と羨望と共に噂されていました。(今から思えば、こういうセリフは院生なら言っても許されないことはないですが、プロが言ったら負け。)いろいろご縁があってお話させて頂くようになりましたが、まだ緊張します。

そういう大栗先生が書いた数学の啓蒙書ですから、基本的な所で私がどうこう意見するような事は無かったのですが、ちょっとした言葉遣いとか、茶々のレベルで少しだけ「こうしたらどうですか」というコメントを言わせて頂きました。(私は某 Y 先生の集中講義の時にミスを片っ端から指摘してたら「人間スペルチェッカー」と揶揄されましたが、その能力を発揮?!)一応、微小なりとも貢献できたかもしれません。

ただ、大栗先生の本だけにどれほど多くの方が読まれるのか想像もつかないほどですから、私の関わりが「微小」と言っても「×読者数」を考えると、その重みに身の縮む思いです。

とグダグダ言い訳を書きましたが、それはともかく全体の印象:
  • 物理学者が書いたにも関わらず、「これは数学者が書きました」と言っても違和感が無いほど自然な数学の説明になっています。それどころか数学全般への教養の深さは、専門に閉じこもりがちな数学者も見習うべきでしょう。もっとも私個人としては大栗先生にはむしろ「物理学者の見方」で書いて頂いた方が面白いんですが、それはこの本の目的とする所ではない。
  • そう言えば、こういう広い範囲を解説した数学啓蒙書は私が子供の頃はよく見たような気がしますが、最近はありましたっけ?いや、不完全性定理や Galois 理論まで一般向けに詳しく、ごまかさず、しかも分かるように書いた本は昔も含めて記憶にありません。(無いとは言えません、私は知らない、というだけ、と付け加えるのが数学者的厳密さ?)数学者も頑張らねば!
  • 「はじめに」の文章が娘さんへの愛情にあふれていて素晴らしいです。大栗さんが「娘の成長記録」のような形式の車の CM を見てこんな事を漏らしていたのを思い出しました。(研究者としての厳しい大栗先生を知っているだけにこのつぶやきを見て最初は「?」と思いましたが、なんか微笑ましい。(^_^) )(追記:大栗先生が上記 CM のリンクを再度見つけて下さいました。こちらからどうぞ。)
  • Web や原稿で見た時と、本で見るのとは随分印象が違います。おそらくその理由の一つはイラスト。「父から娘へ」を基調として、しかも本文の内容を反映させている、柔らかい雰囲気のあるイラストは、連載には無かった本の「特典」ですね。
原稿を読ませて頂いた時は、時間が無くてかなり急いで読みましたから、これから味わいながら読ませて頂きます。もう一度、大栗先生ありがとうございました。
06:12 | Impressed! | Voted(1) | Comment(2) | 書評
Comment
suzumura2015/03/29 13:29:58
早速、私も一冊購入いたしました。これから読み進めるのが楽しみです。
Takebe2015/03/31 06:04:17
鈴村先生、またまた反応遅くなりました。

大栗先生に感想をお伝えになると喜ばれると思います。読者のコメントに丁寧にお返事くださる方です。