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2010/04/17

研究費申請書・報告書の簡略化の具体案

Tweet ThisSend to Facebook | by tmiyakawa
神経科学者SNSからの提言とそのマスコミによる報道、さらに大阪での会合の影響もあってか、事務的な無駄を排除して効率化する方向で具体的に動いていただくことができるかもしれない状況になってきました。行政にたずさわる方々がチームを作って、複数年度予算の導入、使途の弾力化、競争的資金の使用ルールの統一化、申請書・報告書の簡略化・統一化などなど、研究費の効率的予算措置の検討をしてくださる可能性が出てきたようです。

このような動きの一環として、文科省の方より研究費の申請・報告のシステムについての意見を聞いていただいており、現在、自分の考えをまとめているところです。システムの改善について、現場の研究者の意見も聞いてくれるというのがうれしいですね。

以下に、現段階で自分が考えていることをメモ程度に記しておきます。もし何かご意見・アイデア・アドバイスなどありましたら、お気軽にコメント欄に記載していただければと思います。

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まず、具体案を考える前に、研究費の申請書・報告書の目的を考えてみます。

申請書については、1) 申請の研究計画の内容が適切か、2) 申請者がその研究を遂行するのに十分な能力を持っているか、3) その研究を遂行する環境にあるかどうか、4) 研究にかかる経費の内訳が適切かどうか、について第三者が判断しますので、これらの関する情報が記載されている必要があるでしょう。

報告書については、1) 当該の研究費によってどのような成果が得られたかを、国民に報告・説明する(「国民」には当然、他の研究者や官僚も含むが、主たる対象は研究費の出資者である国民)、2) 研究費をどのように使用したかについての記録を残すことにより不正使用を防止する、という意味があると思われます。

 以上の目的を達成できることが第一に重要であると考えられますが、これが達成される範囲内でムダを最大限省くことが次に大切なことでしょう。このムダには印刷費、印刷物の保管・管理・廃棄などの目に見えやすい経費に加え、事務員や研究者の人件費・時間の目に見えにくい(がしかし莫大な)コストがかかっていると考えられます。このコストはすべて貴重な税金から支払われています。つまり、上の目的を達成できる範囲内で、1) 申請書・報告書の欄の数、紙面のページ数、提出の頻度、書式の種類などはできるだけ減らす(Reduce)、2) 同じ内容・情報についてはできるだけどこか一ヶ所に記載・アップデートしておくだけでよいようにして様々な申請書・報告書・データベースなどではその情報を再利用し重複は可能な限り避ける(Reuse・Recycle)、という書類情報3Rの原則を基本にすることによるコスト削減を目的とすることを、申請書・報告書の改善の議論の上でのコンセンサスにするとよいのでは、と思います。

 次に、この書類情報3R原則にもとづいて、研究費の申請書・報告書の改善案と、それに必要な各種システムの改訂や連携についてかなり具体的に考えてみます(以下、主に文科省科研費のフォームを念頭において書いています)。

 
全般的な改善


・ 研究費は基本的に複数年度予算制度とする。従来型の報告書は基本的には中間報告と最終報告だけにする(3年以内のものは中間報告はなし)。年度ごとのものは廃止し、論文発表ごとに短くできるだけわかりやすい日本語の説明をネット上のシステムに掲載。

・ 省庁横断的に申請・報告書のフォームなど、できるだけ統一を目指す。

 
研究費申請書

・ 研究費申請書の表紙PDFファイル作成サイトを作る(「確定申告コーナー」のようなシステム;省庁横断的であることが好ましい)。この表紙作成サイトでは、申請書の表紙部分の基礎情報(所属機関・部局・職)について、研究者番号を入力すると自動的にRmapまたはe-RadまたはReaD(以下、「3R」と呼びます;これまた3Rでややこしくてすみませんが)などから必要な情報がフィードされるようにする。

・ 「研究業績」、「研究略歴」の欄は廃止する。審査用Webサイト中に、3Rのどれかでの当該研究者のURL(申請書中の科研費研究者番号から自動的にフィード)が出てきてクリックすると経歴と業績を見ることができるようにすればよい。この場合、URLへのリンクが切れていたり、内容がアップデートされていないと問題なので、そこをどうするかについて検討は必要。「申請した研究に関連する重要な研究」については、どう表現するか。また、「研究代表者に下線」というのにはどう対応するか(RmapでPubmed、CiNiiなどからのインポート時に自動的につくようにしていただく?)。「連携研究者」についての業績についても名前と研究者番号のみの記載にする(審査用Webサイト中にその人の3R内のURLへのリンク)。

・ 「研究費の応募・受け入れ状況・エフォート」欄も廃止。3R(おそらくこれはe-Rad)内の対応する部分のURLが審査用Webサイト中に出てくるようにする。eRadには既にこの情報が集約済なはずなのでこの欄の記入は重複作業となる。

・ 「これまでに受けた研究費とその成果など」の欄も廃止または削減。これまでに受けた研究費についてはe-Radか科研費DB(省庁横断的なので、おそらくe-Rad)に集約(研究成果と中間・事後評価も含める)しておき、それへのリンクが審査用Webサイト中に掲載される。

・ 「研究施設・設備・研究資料等、現在の研究環境」について。当該の研究者がこれまでに研究費で購入した高額備品・資料についても3R中のどこか (eRadか?)に集約しておく。Rmapにも「研究施設・設備・研究資料等、現在の研究環境」という欄があっても良いかもしれない。審査用Webサイト中に3R内のこの項目へのリンクをはる。これにより、購入申請している高額設備・備品の妥当性の判断材料になるだけでなく、その高額備品を使いたい人が検索して共同研究の依頼をするのも容易になる。「高額備品」の基準は、どの程度が妥当か(100万円、300万円、500万円以上くらいか?)。

・ 「研究計画・方法」で年度ごとに計画を書くのはムダ。研究、特にボトムアップのではものは2年後、3年後のことは予想がつかないことが多い。チャレンジングな研究に関しては、いつ頃見つけたいものがみつかるかは予想が困難。予定していた研究の途中での意外な発見などにより、計画を大幅に変更したほうが良い場合もかなりある。

・ 「研究経費」の年度ごとの記載とその使用内訳は必要か?必要であるとすればなぜか?必要である場合も、高額備品と人件費だけでよいのではないか。消耗品や旅費についての申請にほとんど意味はないのでは。研究の進展により、フレキシブルに研究打ち合わせの旅費が使えるほうが良い。JSTのCRESTなどの場合、内訳の内容が精査されアドバイスがもらえることがあるので意味があるかもしれないが、科研費の場合、アドバイスや意見がもらえることは皆無に近いので、ほとんど意味がないのでは?

・ 所属の部局ついての「現有設備」については、各申請者がこの内容を小さい欄にまとめるというのは適切ではないであろう(欄に書き切れないのと、これをまとめるのは部局であるべき)。各機関の部局毎での主な高額共通機器・設備などのデータベースを設け、それへのリンクをはる形にすればよいのでは。部局毎の現有設備のデータベースを構築するのはかなりのサイズのプロジェクトになりそうであるが、高額機器の有効活用、共同研究の推進の意味でもあったほうが良さそうである。

 

研究費報告書

・ 収支決算報告書(C-6-1)については研究者が記載するべき項目は、皆無。これは所属機関の事務が行うべきものとして規定するべきであろう。

・ 実績報告書(C-7-1)は(論文が出ている場合は)不要ではないか。「研究発表」欄に相当する部分については、雑誌論文、学会発表(招待講演)、図書、産業財産権の各アイテムが発生した時点(論文発表時など)で、3Rのどれかのシステムにその情報を掲載する(年度末に、それがきちんと行われているかチェックされる仕組みはあったほうが良い)。情報は一元的に蓄積させる方式がよい。

・ C-7-1の「研究実績の概要」に相当するような部分については、論文が出なかった場合や論文になっていない部分について特筆することがある場合にのみ、e-Rad(?)の当該の研究費の欄にその概要を記載する。

・ 新学術領域研究などのグループ型研究では、個々の班員による報告書に加え、グループ全体の報告書の提出の必要がある。これについてもできるだけ作業が重複しないように努力する必要がある(下のほうの議論参照)。

 

科研費交付申請書(A-2-1)・交付請求書(A-4-1)・確認書(A-2-3)

・ これらはそもそも必要か?

・ 交付申請書の使用内訳については、もともとの申請書の総額に対して、実際の配分額の割合に基づいて、自動的に比例配分されるようになればよいのではないか?そもそも使用内訳が必要ない、ということであれば交付申請書自体も必要ないのではないか。

・ 交付申請書内の「研究の目的」「本年度の実施計画」はオリジナルの申請書と重複するので不要では。

・ 「主要な物品の内訳」については、審査や評価されるわけでもなく、不要でムダな情報ではないか。

・ 交付請求書・確認書は完全に形式的なもので、実質的な意味がない。申請時にこのプロセスに同意する形にして、廃止するべきでは。

 
以上を実現するために、RmapまたはReadまたはe-Rad(=3R)に実装されるべき機能

・ 3Rのどこかで、各論文アイテムに、それをサポートしたファンディングの情報(科研費の種類・番号など)、一般向けのわかりやすい400〜800字程度の要旨(、引用数情報)をつける。

・ 3Rに蓄積される業績は共通フォーマットで相互にインポートやエクスポートができるようにし、他のシステムやアプリケーションでも使えるようなデザインにしておく。

・ 要旨中で使用した専門用語の解説をWikipedia的なところに記載するように推奨する(既に専門用語解説がWikipedia的なところにあるものについては不要)。Rmapのキーワードについてのメタ情報を活用?

・ ScopusやWoS、ないしはGoogle Scholarなどと連携し、各論文アイテムには引用数がフィードされるようにする。ScopusやWoSには、「名寄せ」情報がない(同姓同名問題がある)ので、その情報を与えるかわりに引用数をもらう。

・ 3Rからの業績情報は誰でも簡便に取得できるようにしておく(Rmapでは現状でもこれがかなり簡便にできるようになっている)。大学などの機関や部局の評価に関する報告書については、機関の事務系職員ないしは評価機関がこれらの情報を用いて準備するようにする。研究者は機関評価のための報告書作成には原則的に関わらない、ということで済むようにする。新学術領域研究などのグループ型研究の報告書も同様な方向(=個々の研究者はできるだけ関わらなくて済むような方向)で作成する。


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最後にもう一つ。これは少し毛色の違う案ですが、研究計画の記載の必要すらもない、これまでの業績に連動して額が決まる基盤的研究費の導入も期待したいところです(神経科学者SNSの提言にもあります)。現状の文科省科研費の審査は、事実上、これまでの業績の評価が大きなウェイトをしめていますので、この部分を独立させると良いのでは、ということです。この基盤的研究費は自由な研究に使えることにすれば、「目的外使用」を気にする必要もなく、他の研究費との「合算による使用」など弾力的に使えることにもなりますので、いろいろなことがたいへんやりやすくなります。

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norico2010/04/19 12:31:51
私が審査を担当している分野では、「アジア諸国と連携したサイエンスコミュニケーション」や「ソフトウェア開発」「科学の普及啓発」「高校と大学の連携」などが成果であることがあります。他にも、芸術系、建築系なども、論文が第一義的な成果ではないことでしょう。論文が第一義的な成果とは限りませんので、C-7の扱いはもう少し注意が必要のように思います。
どの論文がどの研究資金によるものか、というのは、なかなか一概に説明することができなくて、研究者のみなさんは苦慮されているところではないでしょうか。そこの部分の管理をあまりに強めると、自由な研究が阻害され、結局のところ国民にメリットがあまりないように思います。
Scopusから論文情報を渡してもらうことに関しては、国として一元的に交渉してほしいと私も思います。(買う、という発想の前に何かできないのだろうか・・・)
tmiyakawa2010/04/19 14:57:33
C-7-1には、ソフトウェア・データベースの開発、科学コミュニケーション、作品などの記載欄がないですね。この種のものについてもRmap等のシステムに登録され業績としてきちんと評価されるようにするのが良さそうです。

「どの論文がどの研究資金によるものか」については、ご指摘のように厳密に分けることは容易ではないです。例えば、ある科研費でパソコンを購入した場合、そのパソコンを使って何かを行った研究については、すべてその科研費でサポートされたことになるでしょうので。ですので、実際上は、ある論文のアクノレッジメントにはその時点で取得している複数の研究費の名前が並ぶことになることが多いように思いますが、それでOKということにするのが良いのではないでしょうか。「目的外使用」という言葉が最近よく使われますが、これを変に強調することはいろいろとマイナスになります。研究費Aで購入したマウスに研究費Bで購入した餌を与えることについて厳しく監査する、という状況のおかしさは川端大臣もご指摘されていました。「目的」ということについて大きく捉えるような流れにもっていく必要があるかと思います。