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2019/07/13

「『コンクリートから人へ』は無責任」発言が示唆する安倍首相の「民主党政権への負い目」

Tweet ThisSend to Facebook | by suzumura

昨日、自民党総裁の安倍晋三首相は三重県鈴鹿市での街頭演説で民主党政権で用いられた「コンクリートから人へ」という標語について、「無責任なスローガンで、防災がおざなりになっている」と発言しました[1]。


1959年9月26日に伊勢湾台風が上陸してから今年で60年目となることを受け、河川の改修や堤防の造営などにより自然災害への対策を行っているとして政権の実績を強調するとともに、民主党政権時代の政策を「防災がおざなり」と指摘することで、民主党の流れを汲む野党第1党の立憲民主党と第2党の国民民主党の両党を間接的に批判することが、安倍首相の発言の眼目です。


安倍首相の発言は、参院選での遊説の最中になされたものです。


そのため、論理的な整合性や事実との一致などは必ずしも重視されず、むしろ目の前にいる聴衆の歓心を買い、聞き手の納得感を高めることに重きが置かれやすいものです。


また、日本の災害史に大きく残り、今も歴史の教科書に記される伊勢湾台風は、三重県の人々にとっても忘れ難い出来事と言えるでしょう。


それだけに、伊勢湾台風と「コンクリートから人へ」という標語を取り上げ、「民主党政権時代は防災がおざなりになっていたが、自民党が政権を奪還してからは防災や『国土強靭化』が進められている」とすることは、演説を聞くその場においてはある程度の納得感を持つ論法となることでしょう。


一方で、民主党が掲げた「コンクリートから人へ」という標語は公共事業のうち冗費を削減して社会保障や子育て支援の財源を確保し、「教育や科学の役割をしっかりと見据え、真の教育者、科学者をさらに増やし、また社会全体として教育と科学に大きな資源を振り向け」ること[2]を主眼とするものでした。


結果として民主党政権は公約に掲げた八ッ場ダムの建設中止を実現できないなど、当初掲げた理念に比べて得られた実績が釣り合ったとは言い難いところがあります。


それでも、子ども手当を導入して給付対象を中学生まで拡大するなど、「社会全体として教育と科学に大きな資源を振り向け」ることに一定の成果が得られたことも事実です。


このような点を考慮せず、「『コンクリートから人へ』は無責任」と断ずるとすれば、そのような態度は事柄の全体を眺めず、自らの主張に都合のよい箇所のみを取り上げて議論する、いささか誠実さを欠く態度と言えます。


こうした態度は、「悪夢のような民主党政権」[3]という発言とともに、2007年の参院選での敗北が自らの退陣に繋がり、麻生、福田の2代の内閣で自民党への支持が衰退し、民主党政権への道を開き、自らは2012年9月の総裁選挙まで雌伏を余儀なくされたという安倍首相の負い目や劣等感を示唆しているのかも知れません。


[1]安倍晋三首相「『コンクリートから人へ』は無責任」. 朝日新聞, 2019年7月13日朝刊4面.
[2]鳩山首相の施政方針演説 全文. 読売新聞, 2010年1月29日夕刊5面.
[3]首相演説要旨. 読売新聞, 2019年2月11日朝刊4面.


<Executive Summary>
Prime Minister Shinzo Abe's Speech Implies His Inferiority and Complex to the DPJ Administration (Yusuke Suzumura)


Prime Minister Shinzo Abe himself set out on a stumping tour of Mie Prefecture and made his speech on 12th July 2019. In the speech he criticised the Democratic Party of Japan Administration concerning on a slogan "From Concrete to People". It implies his inferiority and complex to the DPJ Administration, since he had to leave the position by the defeat of the Elections of the House of Concillors of 2007.


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