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2019/09/19

ラグビーワールドカップ2019の開催が日本に与える意味は何か

Tweet ThisSend to Facebook | by suzumura

明日9月20日(金)から11月2日(土)まで、第9回ラグビーワールドカップが東京都調布市の東京スタジアムなど全国12回所を会場として開催されます。


ラグビーワールドカップがアジアで開催されるのは今回が初めてで、入場券も合計180万枚の95%が販売済みとなっており、4300億円の経済効果があるとの指摘もなされています[1]。


一方で、例えば都心を歩いていても、秩父宮ラグビー場の所在する外苑前や東京スタジアムを擁する京王線沿線ではラグビーワールドカップの広告や宣伝が盛んに行われ、街頭も種々の装飾が施され、あるいはテレビ番組などでラグビーワールドカップの話題が取り上げられる機会が多くなってはいるものの、日常会話の中でラグビーやワールドカップが主題となる頻度が多くないことは、われわれが日々の生活の中で実感するところです。


もちろん、大会が開幕すれば多くの人が注意と関心をもって眺めるであろうことは想像に難くないと言えます。


その意味で、開幕直前の時点におけるラグビーワールドカップは、一部の熱心な愛好家を中心に人気が維持されており、大衆的な興味の対象とはなり得ていないことが推察されるところです。


ところで、ラグビーが日本に将来されたのは19世紀末のことで、1899(明治32)年に慶応義塾の英語教師エドワード・ブランウェル・クラーク(Edward Bramwell Clarke, 1874-1934)とケンブリッジ大学を卒業して帰国した田中銀之助(1873-1935)により、慶應義塾の学生に対し初めてラグビーの指導が行われた逸話は周知の通りです。


そして、1910(明治43)年、第三高等学校(現在の京都大学)にラグビー部が誕生し、1911(明治44)年に慶應義塾と三高の試合が行われ、1911年に同志社専門学校にもラグビー部が誕生したことで、慶應義塾、三高、同志社の3校による定期戦が日本ラグビーの草分けとなったことも、日本におけるスポーツの伝来と普及の歴史の中の基礎的な事項です。


このように、ラグビーは日本に将来されて以来すでに3つの世紀を経ていることが分かります。


それにもかかわらず、2018年の時点で日本における選手登録者数は108,796人であり[2]、2019年に20万人の選手登録者数を実現させるという日本ラグビーフットボール協会の計画の達成は困難と考えられます。


こうした状況は、ラグビーが選手間での身体の激しい接触を伴い、絶えず負傷の可能性を含む競技であることが少なからず影響していと推察されます。


これに加えて、ラグビーが日本に紹介された際の普及の過程や用具の国産化の問題も見逃せません。


すなわち、現在も日本におけるスポーツの中で屈指の人気と競技人口を誇る野球の場合、木戸孝正、牧野伸顕、大山助市、得能通要、平岡凞らの米国に留学した日本人学生が指導に従事したことが、明治時代以降の競技人口の拡大に一定の貢献を果たしたと考えられます。


これに対し、英国の留学生が帰国後にサッカーやラグビーなどを伝授する事例は乏しいのが実情です。


さらに、野球の場合はホーレス・ウイルソン(Horace Wilson, 1843-1927)、セオドア・モンロー・マクネア(Theodore Monroe MacNair, 1858-1915)、ジェームス・ブラックレッジ(James Blackledge, 生没不詳)などの米国人教師が継続して指導するものの、英国人教師はサッカーやラグビーをもたらすものの継続した指導を行った形跡は認められません。


あるいは、野球のボールは糸まき式のため、品質を問わなければ製造は比較的容易であったものの、フットボールやフットボールのような丈夫な空気入りボールは国産化が困難であり、舶来品は高価であったことも、競技の普及を阻害した要因の一つでしょう。


また、ラグビーの魅力を「審判者の一言は泰山より重く絶対的服従を要求す」[4]といった紳士性に求めたことも、大衆的な人気を獲得することを難しくしたと言えます。


それだけに、今回のワールドカップを通してラグビーの裾野が広がり、観戦者だけでなく競技者も増加するなら、日本のラグビー界とスポーツ界にとっては、経済効果といった一過的な現象を超える、より意義のある成果が示されることになることでしょう。


[1]ラグビーW杯 消費に勢い. 日本経済新聞, 2019年9月19日朝刊2面.
[2]The 2018 World Rugby Year in Review. World Rugby, year unknown, http://publications.worldrugby.org/yearinreview2018/en/1-1 (accessed on 19th September 2019).
[3]日本ラグビー戦略計画2016-2020. 日本ラグビーフットボール協会, 2017年4月1日, https://rugby.dweblink.jp/images/JRFU_statement_2016-2020.pdf (2019年9月19日閲覧).
[4]ラグビー式フットボール. 慶応義塾蹴球部, 博文館, 1907年, 3頁.


<Executive Summary>
What Is a Meaning for Japan to Hold the Rugby World Cup 2019? (Yusuke Suzumura)


The 9th Rugby World Cup will be held in Japan from 20th September to 2nd November 2019. On this occasion we examine the most important meaning for Japan to hold such an international game in undedeveloping cuntry of rugby.


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