MISC

2018年

初代培養とオープンイノベーション

日本毒性学会学術年会
  • 井上 正宏
  • ,
  • 近藤 純平
  • ,
  • 辰己 久美子

45
0
開始ページ
S18
終了ページ
2
記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
日本毒性学会

<p>患者個人に最適な治療を的確に判断して行う医療が求められる時代に入っている。これからの薬剤の開発、バイオマーカーの探索、耐性機構の解明などには、個人差を反映する患者組織が基本的な研究材料となる。また、がん細胞や正常細胞の初代培養は刺激や治療に対する応答性が観察できることから、非常に有用な情報を提供する。我々の開発したCTOS法は、腫瘍組織からがん細胞を調製・培養する方法のひとつで、がん組織からがん細胞を単細胞化することなく細胞塊として調製する方法である。CTOSは形態学的特徴、極性状態や休眠能など樹立癌細胞株では失われた特性を保持している。CTOSを用いた感受性試験は、初代培養で用量依存曲線を解析することを可能にした。マウス移植腫瘍からは膨大な数のCTOSが一度に取れるので、CTOSをハイスループットスクリーニングに応用できる。さらに多数の患者腫瘍に由来するCTOSパネルでCTOSライン間の感受性の多様性を検証できる。正常組織からの細胞調製・培養についても、肝臓組織幹細胞の新しい効率的な調製法の開発を行っている。このように広く細胞培養領域でイノベーションが進行している中で、研究開発を推進するためには強固なインフラを構築する必要がある。診療過程で生まれる残余検体が第一のバイオリソースとなる。残余検体とは、患者から診断・治療を目的として採取された臓器・体液で、検査終了後の検体の残存部分を指し、通常は医療廃棄物として廃棄される。残念ながら我が国のバイオリソース有効利用は、国際的に大きく後れを取っている。凍結・固定・抽出を経た検体の供給はある程度整備されつつあるが、培養に適した新鮮な検体の利用は各研究機関と各医療機関に任されている。臨床検体は本来オープンプラットフォームとして利用されるべきものである。本講演ではこのような問題を解決する戦略を提案したい。</p>

リンク情報
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130007432185
ID情報
  • CiNii Articles ID : 130007432185
  • identifiers.cinii_nr_id : 9000397800352

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