基本情報

所属
広島大学 大学院人間社会科学研究科 上廣応用倫理学講座 研究員(常勤)
学位
博士(文学)(2025年3月 北海道大学)
人間知・脳・AI研究教育プログラム 修了(2025年3月 北海道大学)

連絡先
kiichiinarimorigmail.com
J-GLOBAL ID
202201020275285872
researchmap会員ID
R000033018

略歴

岩手県出身。北海道大学文学部卒業後、大学院文学院に進学。2025年3月、27歳で博士(文学)を取得。
在学中、CAEP応用倫理教育プログラム・CHAIN教育プログラムを修了。学術振興会特別研究員(DC1)、北海道武蔵女子大学非常勤講師などを経て、2025年1月より現職。

研究関心

自由意志の哲学を出発点として、道徳的責任と哲学的直観・道徳直観に関する研究、および医療倫理・生命倫理、先端技術にかかわる倫理的問題の研究をしています。

これまでは主に以下のプロジェクトに取り組んできました。

① 自由意志と直観をめぐる実験哲学的研究

 現代自由意志論では、決定論と自由意志が両立するか否かという問題が中心的に論じられています。両立論によれば自由意志は決定論と両立し、非両立論によれば両者は両立しないとされます。いずれの立場の論者も、各理論が私たちの直観に適うことを主張してきました。しかし近年、実験心理学的手法を用いて人々の直観を調査する「実験哲学」の発展に伴い、私たちは両立論的直観と非両立論的直観の両方を示すことが明らかとなっています (c.f. Nichols & Knobe, 2007)。

博士課程ではこの問題をめぐって、二つの直観をいずれも真正な直観として解釈するモデル「説明表象説」の提案(稲荷森 2024)や、自由意志の実験哲学では参加者のほとんどが課題分を理解できないという問題に着眼し、新しいシナリオを用いた実験などを行ってきました(Inarimori, Haruki & Miyazono 2024)。

現在は、道徳的責任の帰属には自由意志の帰属より、むしろ処罰欲求のほうが強くかかわっているのでないか、という見通しのもと、言語的直観にも着目しつつ、心理学的なレベルでの自由意志と道徳的責任の関係について研究を継続しています。

② 哲学的専門性(Philosophical Expertise)と哲学的直観の関係

 Weinberg et al. (2001)をはじめとする多くの実験哲学的研究は、文化差や課題の提示順序など、哲学的直観が哲学的真理と無関係の要因に影響されることを示しています。こうしたデータに基づき、一部の実験哲学者は哲学的直観の信頼性を批判してきました。これに対しWilliamson (2007)など一部の哲学者は、実験哲学が対象とする一般人の直観が信頼できないからといって、哲学的専門性を備えた哲学者の直観まで信頼不可能ということにはならないと反論しています。これまで私は、"Expertise Defense"と呼ばれるこの議論を再構成し、自由意志の実験哲学で得たデータも踏まえつつ、哲学的専門性がいかなる仕方で直観に寄与しているのか明らかにすることを試みてきました (Inarimori 2024)。

 現在は、哲学的専門性にも着眼しつつ、哲学的直観・道徳直観の問題を受け止めたうえで、思考実験という方法論そのものを哲学・倫理学研究の中に適切に位置づけるべきかを学際的に探究しています。また、Chat-GPTに代表されるLLMを用いた思考実験の可能性について、情報科学者と協力して研究を進めています。本研究に関連して、サントリー文化財団からの研究助成を受けていました。
 

③ 医療倫理・生命倫理、AI倫理

自由意志研究を背景として、応用倫理学的な問題にも取り組んでいます。最近の論文では、医師の自律的選択という観点から地域枠制度の倫理的問題点について発表し、医学部地域枠制度が医師および医学生の十分な同意に基づかずに職業選択の自由や居住の自由を制約していることを指摘しました(稲荷森 2023)。また、依存症患者に対するバイオエンハンスメントにおけるインフォームドコンセントの問題についても研究を進めてきました (Inarimori, Miyazono and Ichiki 2024)。

また、トヨタ財団より助成を受け、自律的なAIに対する自由意志・道徳的責任の帰属可能性についても研究をしていました。現在は自動運転車に焦点を当てて研究を継続しています。

加えて、哲学方法論の研究に関連して、「実験生命倫理学」と呼ばれる新たな分野の研究も始めました。実験哲学の手法を用い、生命倫理学上の問題に関する人々の直観を明らかにすることで、哲学的議論への貢献を目指しています。


委員歴

  2

論文

  18

MISC

  5

講演・口頭発表等

  47

担当経験のある科目(授業)

  2

所属学協会

  7

共同研究・競争的資金等の研究課題

  5

メディア報道

  1