2017年3月
バルーン大動脈弁切開術を施行した二尖弁重症大動脈弁狭窄症による急性心筋梗塞・心原性ショックの1例
心臓
- 巻
- 49
- 号
- 3
- 開始ページ
- 292
- 終了ページ
- 297
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 出版者・発行元
- (公財)日本心臓財団
症例は69歳男性。150m程の歩行後に呼吸苦と前胸部絞扼感を自覚し救急搬送された。来院時ショックと低酸素血症を認め、両肺でcoarse cracklesを聴取した。心電図で完全左脚ブロックとaVR誘導のST上昇を認めた。心エコーで求心性左室肥大とびまん性左室壁運動低下、大動脈弁の輝度亢進と開放制限を認め、大動脈弁狭窄症(AS)が疑われた。緊急冠動脈造影では冠動脈に閉塞および狭窄病変はなく、重症ASによる急性心筋梗塞、心原性ショックと診断し、大動脈内バルーンパンピングを挿入した。第2病日に呼吸状態が悪化し人工呼吸器管理とした。経食道心エコーで二尖弁が疑われた。Peak CK 16,000(CK-MB 1,397)IU/Lと心筋障害は高度であり、準緊急での大動脈弁置換術(AVR)は高リスクと考えられ、内科的治療による心不全改善後にAVRを考慮する方針であったが、第5病日に頻脈性の発作性心房細動/粗動により血行動態が破綻し、頻回の電気的除細動にても改善せず、弁狭窄緩和による循環動態改善目的に同日緊急経皮的バルーン大動脈弁形成術(PTAV)を行うこととした。順行性アプローチでInoueバルーンを用い20mmと21mmで2回の裂開を行った。PTAV後は不整脈の再発なく、心拍出量の上昇を認めるなど血行動態が改善し、第9病日に待機的に生体弁によるAVRを行った。以降経過順調で第28病日に自宅退院された。(著者抄録)
- ID情報
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- ISSN : 0586-4488
- 医中誌Web ID : 2017146932