2020年4月 - 2023年3月
早期ライフステージにおける口腔マイクロバイオーム形成に影響を及ぼす因子の解明
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
本年度は、令和2年1月から3月に福岡市東区保健所の4か月児健診を受診した乳児とその母親から採取した舌苔試料の解析を開始した。はじめに、一部の試料を用いて次世代シークエンサーIon PGMによる予備実験を行い、舌苔試料の品質を確認した。採取した試料からDNAを抽出したのち、PCR法を用いて細菌16S rRNA遺伝子のV1-V2領域を増幅し、Ion PGMを用いてその塩基配列を解読した。解読した塩基配列をもとに各試料中の細菌構成を明らかにしたところ、母親の舌苔マイクロバイオームは乳児と比較して菌種多様性(検出菌種数、Shannon index、Phylogenetic diversityなど)が有意に高くなっており、その細菌構成も大きく異なっていた(ANOSIM P value <0.001)。また、乳児の舌苔では乳児特異的な細菌種(Streptococcus perorisなど主にStreptococcus属の細菌種)が高い比率を占めていた。この結果は過去の報告と一致しており、サンプリングに問題はなく舌苔試料の品質は十分であることが確認された。そこで、ロングリードシークエンサーのPacBio SequelⅡを用いたより詳細な解析を行った。採取した全試料から抽出されたDNAを鋳型とし、PCR法を用いて細菌16S rRNA遺伝子の全長(V1-V 9領域)を増幅した。その後、PacBio SequelⅡにて増幅断片の塩基配列を高精度に同定し、各試料の中の細菌構成を詳細に同定した。現在は、得られたシークエンスデータのクオリティチェックならびに母親と4か月児の舌マイクロバイオームについての詳細な解析を行っている。また、本年度は1回目の追跡調査である1歳6か月児を対象とした調査も開始した。令和3年3月から5月に実施される福岡市東区保健所の1歳6か月児健診において口腔診査ならびに舌苔採取の計画を進め、令和3年3月に健康診査票と質問紙票から情報の取得を開始した。
- ID情報
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- 課題番号 : 20H03901
- 体系的課題番号 : JP20H03901