共同研究・競争的資金等の研究課題

2019年4月 - 2021年3月

民事手続における集合的権利保護の仕組み及びその必要性に関する理論的研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業  特別研究員奨励費

課題番号
19J11555
体系的課題番号
JP19J11555
配分額
(総額)
900,000円
(直接経費)
900,000円
(間接経費)
0円

消費者の請求権を集束する新たな手続を創設した消費者裁判手続特例法は、被告事業者の責任の確認とそれに基づく消費者の加入・救済を分ける新たな手続構造を採用している。2019年度は、この特例法の手続に近い制度を採用したフランス法及びドイツ法を参照し、消費者裁判手続特例法の独自性は何か、その発展性はどこに見出せるかという点を研究した。
まず、特例法の独自性について、特例法は共通義務という新たな概念を作り出し、確認の訴えの利益の範囲を拡大している。この点は、現在は原告適格の解釈の中で論じられるのが一般的である。すなわち、特殊な法定訴訟担当であると理解する立場と集団的利益論の延長に位置付ける立場などが対立している。しかし、研究の結果、この問題を訴訟物の問題として捉えることで特例法の手続の本質により迫ることができると判明した。このことは、共通義務と集団的利益論の異同を明らかにしつつ、審判対象たる共通義務の内容を明らかにする点で実務的及び理論的な意義がある。
次に、特例法の発展性について、この種の手続は集合的な和解によって実効的に解決され得ることが比較法的な経験によって明らかにされており、ドイツ及びフランスでもそのような和解の方法が用意されている。そして、被害者に個別的な請求権が帰属しているとの実体法的な理解を前提とする限り、1段階目の手続における和解は第三者のためにする契約になると考えられる。しかし、(既存の権利の処分を含意する)第三者のためにする契約による和解の締結は従来的な和解の方法に比べると特異なものであり、前述した特例法の独自性も手伝って、共通義務確認訴訟上の和解の可否には議論がある。そこで、負担を伴う第三者のためにする契約及び集合的な和解に付される裁判所による和解内容の審査及び許可の意義を研究した。この成果により、共通義務確認訴訟上の和解の対象を緩和することが正当化される。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19J11555
ID情報
  • 課題番号 : 19J11555
  • 体系的課題番号 : JP19J11555

この研究課題の成果一覧

論文

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