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【声明文】共通テストへの記述問題導入の中止を求める緊急声明

共通テストへの記述問題導入の中止を求める緊急声明

 

令和元年126

文部科学大臣 萩生田光一殿

 

数学研究者有志一同

 

2020年度から実施予定の新共通テストでは,数学に記述問題が導入されることになっています。しかし,この計画には以下の述べるように,致命的な欠陥が複数存在します。

 

1 新共通テストの数学記述問題で想定されている解答形式は,結論を導く思考過程を書かせる一般的な記述式の数学試験とはまったく異なり,単に結論となる数式や記号のみを書かせる空欄補充にすぎない。途中過程を省き結論のみを書かせる形式では記述問題としての意義がなく「思考力・判断力・表現力」の評価にはまったく資さない。また,現行の大学入試センター試験の数学マーク式問題でも,解答の形式や多肢選択の誤答選択肢に工夫を凝らすことで,新共通テストの数学記述問題で想定される問題と同程度に数学的思考力の評価が実現できており,敢えて記述問題を導入する意義を見出せない。

2 結論のみの記述であると前後の文脈がないので,表記の癖を誤記と判断される恐れがある。数式に用いられる記号や文字に限っても,個人の癖や習慣による字形のばらつきはきわめて幅広く,単一の数式など,きわめて短い筆記部分の字形から解答者が意図した記号や文字を特定することは困難である。そのため,解答者が正しい解答を意図して筆記したにもかかわらず採点者が誤答と判断することが大いに危惧される。

3 単純な数式であっても表現は一意的でなく,その正否を非専門家が適正に判断することは不可能である。

4 1ヶ所で集中して採点を行えないので,採点の公平性が担保できない。一般的に,記述式の数学試験の採点では,採点作業の進行中に当初の想定にあてはまらない解答が見つかるたびに,採点責任者が正否を判断するとともに,採点基準を更新してすべての採点者に周知し,場合によっては採点済みの解答すべてを遡って新たな採点基準で採点をやり直す。そうすることで採点の公平性を担保している。この手順を実行するため,採点責任者とすべての採点者が1ヶ所に集まって採点を行っている。数千人の採点者が分散して採点を行うと想定される新共通テストの採点では,同様の手順は実現不可能である。

5 事前に問題や解答・採点基準が外部の民間業者に知らされるため,問題漏洩の危険が生じる。

6 採点により民間業者が収集した莫大な情報の管理が難しく,情報漏洩の危険が生じる。

7 また,その情報の目的外利用による利益相反的行為が行われる恐れがある。

 

叙上の通り,共通テストへの記述問題導入は,それにより得られるメリットがまったく存在しません。一方,公平・公正な採点は期待できず,さらに,問題漏洩,情報漏洩,利益相反の危険性が高まります。したがって,私達は共通テストへの記述問題導入の中止を強く要求します。

 

 

発起人:

嘉田勝(大阪府立大学准教授)

齋藤幸子(北海道教育大学准教授)

賛同者:


声明文(PDF)

【声明文】共通テストへの記述問題導入の中止を求める緊急声明(PDF)

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記者会見にあたってのコメント(2019年12月6日)
(2019年12月6日に行われた記者会見で、中村拓人氏に代読いただきました)

大学入学共通テストへの数学記述問題導入は断念すべし

嘉田勝(大阪府立大学大学院理学系研究科・准教授)

2019年12月6日

このたび、「大学入試を考える会」の吉田弘幸氏と、北海道教育大学の齋藤幸子准教授のご協力を賜り、数学研究者のみなさまに『共通テストへの記述問題導入の中止を求める緊急声明』への賛同を呼びかけましたところ、10日ほどの短期間に、私に届いた分だけで41名もの方々が賛同ご表明がありました。
以前から、数学研究者の多くは、共通テストの数学への記述問題導入について、その実現可能性に疑念を抱いていました。それに加えて、昨今の国会審議を通じて、現在想定されている採点方式では大学入学者選抜という目的に耐える正確で公正な採点は実現できないことが明らかになってきました。多数の賛同表明が短期間に集まったことは、数学研究者の間で共有されてきた懸念が、実現不可能という確信に変わったということだと、私は考えます。

声明文で指摘したとおり、現在想定されている共通テストの数学記述問題は、当初の理念とされてきた「思考力・判断力・表現力」の評価に資さないばかりか、採点作業の実現可能性や採点結果の公平性の保証さえおぼつかないものです。また、民間業者が介在することによる情報の目的外使用や利益相反についても厳しく指摘されています。
現在のセンター試験の数学問題は、共通1次試験からの40年間のノウハウの蓄積によって、マークシート方式で機会による採点が可能な形式でありながら、非常に質の高い問題が出題されています。この実績を軽視して、問題山積の記述問題導入を、受験生を混乱に巻き込んで強行する道理はありません。
今回の大学入試改革に伴う共通テストの数学への記述問題導入は、この際きっぱり中止したうえで、あらためて、大学入試における数学試験問題の適切な形式や内容について、数学教育や数学学力評価について高い見識を持つ専門家の意見をまじえた十分な議論がなされることを期待します。

以上