共同研究・競争的資金等の研究課題

2017年4月 - 2020年3月

『北京の宣教師によるメモワール』の総合的研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 若手研究(B)  若手研究(B)

課題番号
17K13327
担当区分
研究代表者
配分額
(総額)
4,160,000円
(直接経費)
3,200,000円
(間接経費)
960,000円
資金種別
競争的資金

本年度はとくに『メモワール』の流通状況の調査に重点を置いた。まず注力したのは『メモワール』のロシア語翻訳版の調査である。これは6巻からなり、フランス語原本の刊行後まもなく出版されている。18世紀のロシアを含むヨーロッパの知識人世界における『メモワール』の広がりを示す事例といえる。ただし翻訳の範囲は、現在まで確認できた限り原本のうち第1および2巻のみにとどまっており、実際に流通したのがどの程度の内容なのかについては今後の考証を要する。
さらに『メモワール』の流通範囲が日本の植民地統治下の満洲にも及んだことが、満鉄奉天図書館発行の『収書月報』の調査を通して明らかとなった。『収書月報』1936年2月号では、『メモワール』がパリから到着した旨の広告が出されており、こうした広告が出ること自体が異例であることから、館長の衛藤利夫がこの報告集の獲得を待望していたことがうかがえる。
また『メモワール』を含む18世紀在華イエズス会士による報告と、19世紀以降の世界における中国をめぐる知、もしくは中国学(Sinology)との関わりについても調査した。イギリス大使として清朝に派遣されたマカートニーと在華イエズス会士が交わした書簡のほか、19~20世紀ヨーロッパの学者が入手していた中国関係文献の調査を行ったほか、18世紀のフランス出身在華イエズス会士らの作成した中国地図が、間島問題など20世紀前半の日本が深く関わった領土問題の際にも引き合いに出されていたことなどについて、調査を行った。
以上の史料調査はおもに大英図書館、イギリス国立公文書館、北京第一歴史トウ案館、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター、東洋文庫、東京大学各図書館にて行った。
なお11月4日に洋学史学会で開かれた拙著(名古屋大学出版会、2017)の書評会では、洋学・蘭学の観点から『メモワール』の流通に関する貴重な指摘を得ることができた。

ID情報
  • 課題番号 : 17K13327