近年の地球温暖化や,都市部を中心としたヒートアイランド現象の進行に加え,2011年3月に発生した東日本大震災後の長引く節電政策の影響により,全国的に熱中症の発症リスクが現在高まっており,特にその約半数近くが65歳以上の高齢者となっている.これは,加齢に伴う発汗・体温調節機能の低下が大きな原因と考えられており,自覚症状の少ないまま重症化するケースも頻繁にみられている.加えて,現在我が国は急速に進む少子高齢化に直面しており,総人口に占める65歳以上高齢者の割合は,2030年には約28%に増大すると予想され,特に周囲のサポートの乏しい独居高齢者世帯は年々増加の一途を辿っている.このような現状に対し我々は,京都府消防・警察部局等と以前から連携を行っている点を生かし,熱中症(疑いおよび死亡例含む)事例に関し,行政データの提供を受け,重症化の危険因子に関する研究を行った.その結果,高齢者においては独居世帯であることが,熱中症発症後の重症化の危険因子となり得ることが示唆された.今後も引き続き同様の情報提供を受け,行政機関の保有する既存データの有効活用を図るとともに,高齢者の熱中症重症化に関する危険因子の分析を継続する.(著者抄録)