共同研究・競争的資金等の研究課題

2020年4月 - 2025年3月

併存する不安症を起点とした自閉スペクトラム症の新たな病態解明

日本学術振興会  科学研究費助成事業 若手研究  若手研究

課題番号
20K16625
体系的課題番号
JP20K16625
担当区分
研究代表者
配分額
(総額)
4,160,000円
(直接経費)
3,200,000円
(間接経費)
960,000円

自閉スペクトラム症や注意欠如多動症をはじめとする神経発達症の診断評価において,当事者からの主観的な訴えは重要な情報源の一つである。ゆえに抑うつ症状や不安症状が自閉スペクトラム症や注意欠如多動症に関連した症状の自覚的な認識に影響する場合,過剰診断や誤診が懸念される。本研究課題の学術的問いの解明に迫るべく,今年度は,自覚的な神経発達症特性と不安・抑うつ症状の関連を明らかにすることに注力した。
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主訴がF3・F4の成人患者を対象として,初診時と12週後に自己記入式評価尺度(BDI,AQ,ASRS)に回答を得た。うつ病寛解群ではAQの総得点および一部の下位尺度得点が統計的に有意に低下した。持続性うつ病群ではそのような変化は認められなかった。BDIとASRSのスコアには相関があり(相関係数0.5-0.6),抑うつ症状が改善した群ほど明確にASRSのスクリーニング陽性の頻度が減った。一方で,初診から12週を経過しても抑うつ症状が持続した群では,20%以上の人が依然としてASRSのスクリーニング陽性の基準を満たした。以上の成果は英文学術誌に投稿して受理された。これらの知見を踏まえ,日本精神神経学会学術総会においてワークショップを行い,自己記入式評価尺度を活用する上での注意点を広く精神科医と共有した。
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また,不安症・自閉スペクトラム症ともに家系内集積性の高い精神疾患であることを踏まえ,精神科遺伝学を臨床場面に還元する具体例として,精神疾患の家族歴や発症リスクを話し合った臨床経験を日本児童青年精神医学会機関誌に投稿し,受理された。さらには,新型コロナウイルス感染症のパンデミックが不安症に及ぼす影響およびパンデミック収束を見据えて不安・抑うつ症状に注目することの重要性につき総説執筆を行った。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20K16625
ID情報
  • 課題番号 : 20K16625
  • 体系的課題番号 : JP20K16625