共同研究・競争的資金等の研究課題

2020年4月 - 2023年3月

トポロジカルな磁気構造を持つ室温磁性体の物性解明と新物質探索

日本学術振興会  科学研究費助成事業 若手研究  若手研究

課題番号
20K15164
体系的課題番号
JP20K15164
担当区分
研究代表者
配分額
(総額)
4,290,000円
(直接経費)
3,300,000円
(間接経費)
990,000円

①(Fe,Ni)3P系の磁気異方性の組成変化とアンチスキルミオンの安定性の研究
スキルミオンと逆符号のトポロジカル数を持つアンチスキルミオンは、これまでにD2dまたはS4対称性を持つ磁性体で観測されているが、磁気相互作用とアンチスキルミオンの安定性の関係は明らかではなかった。我々はS4対称性の結晶構造を持つ(Fe,Ni)3Pのさまざまな組成の単結晶試料を合成し、磁化測定(および共同研究による強磁性共鳴)により、磁気異方性の組成変化を系統的に調べた。その結果、Fe3Pの強い容易面型の磁気異方性が、Ni置換で急速に弱まり、さらにPdを少量ドープすると磁気異方性が容易軸型に変化することが分かった。また、Rhをドープすると、磁気異方性の方向が温度変化することが分かった。共同研究によるローレンツ透過型電子顕微鏡により薄片試料の磁気構造を調べた結果、アンチスキルミオンの安定化には、容易軸型の磁気異方性エネルギーと反磁場エネルギーの適切なバランスが重要であることが分かった。これらの研究成果は、科学雑誌Advanced Materialsに掲載された。
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②(Fe,Ni,Pd)3Pバルク単結晶におけるフラクタル磁区構造の研究
S4対称性の結晶構造を持つ(Fe0.63Ni0.30Pd0.07)3Pは、薄片試料においてアンチスキルミオンが観測されているが、バルク単結晶の表面付近では複雑に枝分かれしたフラクタル磁区構造が磁気力顕微鏡により観測されている。共同研究により小角中性子散乱測定を行った結果、[110]方向に裾を持つ異方的な散漫散乱パターンが観測された。散乱強度のq依存性は指数-3.1のべき乗則に従うことから、フラクタル次元が3に近い複雑な磁区構造がバルク内部に存在することが確かめられた。また、室温と低温で異なる磁場依存性が観測された。これらの研究成果は現在論文を投稿中である。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20K15164
ID情報
  • 課題番号 : 20K15164
  • 体系的課題番号 : JP20K15164