論文

2011年5月

小脳スパイクニューロンネットワークモデルによる周波数選択的VOR運動学習メカニズムの解析

電子情報通信学会論文誌D: 情報・システム
  • 稲垣 圭一郎
  • ,
  • 小林 誠一
  • ,
  • 平田 豊

94
5
開始ページ
919
終了ページ
928
記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
(一社)電子情報通信学会

生体が有する運動学習機能は、加齢や怪我などに伴う筋特性の変化に適応して精緻な運動を実現する。小脳の破壊や薬理抑制に伴い運動学習機能が阻害されることから、小脳が運動学習の中枢部位を担うと考えられている。頭部運動時に、それとは逆方向へ同じ速さで眼球運動を生成する前庭動眼反射(VOR)は、小脳の運動学習メカニズム解明につながるモデルシステムとして古くから研究されている。これまでに小脳の運動学習は、平行線維-プルキンエ細胞間の長期抑圧と長期増強により実現されることが明らかにされてきた。しかしながら、運動学習の過程において、こうした可塑性が小脳内の信号処理に、どのように寄与しているかは不明である。本研究では、これまでに構築した小脳神経回路モデルに、平行線維-プルキンエ細胞間の長期抑圧と長期増強を実装し、VOR運動学習シミュレーションを実施した。その結果、このシナプス可塑性に基づいてVOR運動学習が再現でき、これを誘発するプルキンエ細胞の発火モジュレーションの変化を再現できた。更にゲイン増加並びにゲイン減少学習後にモデル特性を評価したところ、ゲイン増加学習では眼球運動、ゲイン減少学習では頭部運動に関する顆粒細胞-プルキンエ細胞のシナプス伝達効率の増加が確認された。また、両学習課題において、モデルが頭部運動入力及び眼球運動入力に対してband-pass特性を示すことが確認され、こうした特性が長期抑圧・増強により形成されることがVOR運動学習における周波数選択性を引き起こす一要因であることが示唆された。(著者抄録)

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ID情報
  • ISSN : 1880-4535
  • eISSN : 1881-0225
  • 医中誌Web ID : 2011246070

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