共同研究・競争的資金等の研究課題

2019年4月 - 2022年3月

E. tarda感染における魚類細胞の糖鎖リモデリングの意義解明

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
19K06223
体系的課題番号
JP19K06223
配分額
(総額)
4,420,000円
(直接経費)
3,400,000円
(間接経費)
1,020,000円

本年度は、Edwardsiella tardaのNanAシアリダーゼとシアル酸代謝に注目して解析を行った。病原性の異なる菌株を用い、その感染能とNanAシアリダーゼ活性を比較したところ、病原性の高い株ほどNanA活性が高いことが明らかとなった。また、E. tardaゲノムをin silicoで解析したところ、2種のシアル酸代謝経路が予想された。ゲノム上では2つのN-neuraminate lyaseが存在しており、そのうち1つはNanA活性が低い株で高い発現が認められた。そこでシアル酸を培地に添加してE. tardaの増殖を検討したところ、グルコースの約半分の効率で栄養源として利用できることが分かり、Lyaseによるシアル酸分解が増殖に重要であることが明らかとなった。
また、NanAにより遊離したシアル酸をCMPと結合させるCMP-NANA合成酵素の遺伝子発現を解析したところ、病原性の高い株で発現が亢進していた。そこで、E. tardaの菌体をリポ多糖(LPS)、糖タンパク質、糖脂質に分画し、そのシアル酸量を測定したところ、CMP-NANA合成酵素の発現パターンと同じく、高病原性株で高いシアル酸量を示した。興味深いことに、E. tardaのLPSにはかなりのシアル酸が含まれていることが判明し、他のバクテリアの報告と合わせて考えると、このシアル酸は宿主の免疫系細胞からの逃避に関与していることが推察された。本研究により、E. tardaのシアル酸を介した病原性発現のメカニズムが明らかになったことで、シアル酸代謝を標的としたE. tardaの感染抑制、治療薬の開発において有効な知見となると考えられる。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19K06223
ID情報
  • 課題番号 : 19K06223
  • 体系的課題番号 : JP19K06223