共同研究・競争的資金等の研究課題

2016年4月 - 2020年3月

還流系を用いた中立的生態系実験の実現とその統計力学的解析

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(B)
  • 竹内 一将
  • ,
  • 若本 祐一

課題番号
16H04033
配分額
(総額)
18,070,000円
(直接経費)
13,900,000円
(間接経費)
4,170,000円

平成30年度は、主に「広域化した還流系における二集団競合過程の観察」「高密度菌集団の垂直化の発見」「異種菌集団の観察」「チャネル内の菌集団競合過程の数値計算」を行った。
広域化した還流系における二集団競合過程の観察:昨年度開発した、広域化した還流系を用いて、菌集団の観察を実施した。その際、新たに用いた多孔質膜により蛍光バックグラウンドが上がってしまったため、より高強度の蛍光タンパク質を多く産生する株を形質転換によって作製した。結果、小規模な系で観察していた二集団競合ダイナミクス、特に座屈等によるフラクタルパターンの出現が大規模系でも確認でき、柱など障害物に影響されない観察が実現した。
高密度菌集団の垂直化の発見:非運動性の株をドレイン付の還流系で培養すると、高密度状態では、菌が観察系に対して垂直方向に向きを変える現象を見出した。同様の結果は、菌同士が数珠状に連なる性質のあるコレラ菌では報告があるが、大腸菌では未報告である。垂直化が起こる領域は、基板コーティングなどの実験条件によって異なることもわかり、生態系ダイナミクスへの影響を調査中である。
異種菌集団の観察:運動性菌株と非運動性菌株を混合して培養したところ、非運動性の菌集団が運動性の菌を取り囲むような形でクラスター化が発生するなど、同種の菌集団とは異なるダイナミクスを見出した。
チャネル内の菌集団競合過程の数値計算:昨年度に考案した、チャネル内の菌集団競合過程のモデルに、遺伝子変異と異種間攻撃の要素を新たに加え、数値計算を行った。結果、変異や攻撃の頻度をパラメータにして、二集団が共存する相と、一方が優勢になる相の相転移が生じることが明らかになった。昨年度見出したvoterモデルの挙動は、相転移点直上のダイナミクスに対応する。以上の結果は、モデルの理論解析によっても説明できた。以上の成果は論文にまとめ、出版した。