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微生物共生の仕組みを用いた新たな水環境修復技術開発
 水域が富栄養化すると植物プランクトンが大量に増殖し、水利用上に多くの問題を引き起こします。本研究では、植物プランクトンの捕食者、原生動物と微小動物、それらの共生細菌に焦点を当て、仕組み・役割の理解に試みています。
 微小動物は、植物プランクトンの捕食者として重要な役割を水環境中のみならず浄水場の生物膜処理装置においても重要です。さらに、下水処理場の生物学的処理装置(活性汚泥法など)においては、活性汚泥の良好な状態を観察(モニター)する指標でもあり重要な生物群です。病原性の微小動物の分子生物学的解析は極めて進んでいますが、生物学的水処理に貢献する微小動物群の分子生物学的解析は不十分な状況です。
 そこで本研究室は、水域や生物学的浄水処理装置から分離した藍藻類捕食原生動物をモデル原生動物として下記のテーマを展開しています。

1-1 微小動物群を迅速なモニターに資する遺伝子の探索
 植物プランクトンを捕食する微小動物群を定量する為に顕微鏡が頻繁に使用されています。顕微鏡観察による微小動物群の観察は極めて重要でありますが、同定と分類は技術を要することや観察者によって分類が異なる場合があるなどの問題もあります。一方、細菌群をモニターする方法として定量PCR法などの分子生態学的方法が著しく発展し主たる方法となっています。これまで微小動物は病原性のものに着目され、水処理分野では一部の研究に留まっていました。しかしながら、世界中の富栄養化水源で問題となっているアオコや植物プランクトンの問題には微小動物の有効な利用が求められています。そのため、水処理に有用な微小動物群を選択的にモニターする方法を開発することを目的として研究を展開しています。

1-2 微小動物と共生/共存細菌との種間相互作用の解明
 ヒト腸内細菌の相互作用がヒト健康に影響を及ぼしていることや、シロアリ腸内の原生動物と細菌が影響を及ぼし合っていることは、近年になり広く知られています。 真核生物と原核生物が発生して以来、この様な真核生物と原核生物の相互作用によって、生理作用や進化など様々な現象に影響を与えてきたと考えられます。水処理においても、微小動物と細菌の相互作用によって様々な影響が発現していると考えられます。そこで本研究は、どのような機構のもとで種間相互作用が生じ、どの様な現象が発現しているのかを解明することを目的としています。そのために藍藻類と藍藻類捕食微小動物、細菌をモデルとして用いています。
 本研究の成果は、将来の人為的な生態系の構築のための共生系構築・制御技術につながる基盤を築くこと波及できると期待できます。


1-3 モデル浄水処理装置を用いた植物プランクトンの除去特性評価
 植物プランクトンは、浄水処理過程において凝集沈殿阻害およびろ過閉塞を引き起こす原因となることが多く、凝集剤などの水処理薬剤の投与量および濾過閉塞に伴う逆洗の回数増大による使用電気量の増加が問題となります。さらに、植物プランクトンの細胞密度が極めて高くなると水源中の水の粘度が極めて高く上昇し、浄水処理が極めて困難となることが知られています。その解決策の一つとして、水源から取得した原水をまず生物学的浄水処理によって、植物プランクトンの細胞密度の減少や浮遊物質の除去および植物プランクトンなどによる浄水阻害代謝物質の除去し、水処理薬剤や電気量を抑制することが考えられます。実際の浄水処理場の生物学的浄水処理装置による効果も認められています。そこで、本研究は植物プランクトンの除去能力を向上させることを目的として研究を展開しています。