小堀馨子の研究室

研究ブログ

お知らせ 第12回フィロロギカ研究集会

 第12回 フィロロギカ研究集会
2013年10月19日(土)13:00より
於 大阪大学 豊中キャンパス 待兼山会館・会議室
http://www.osaka-u.ac.jp/ja/academics/facilities/BandB/staff_facility/machikaneyama_facility

13:00~14:00
杉山 和希 欲望する身体
――プラトン『パイドン』とエリスのパイドン『ゾピュロス』
 
14:00~14:50
西井 奨 Ovidius Heroides 4. 175-176
――ヒッポリュトスの拒絶を危惧するパイドラー
 
14:50~15:10 <総会>
 
15:20~16:10
泰田 伊知朗 呉茂一先生の未発表原稿:『イーリアス』に関するエッセイ

16:10~17:10
逸身 喜一郎 ギリシャ悲劇の構成部分・再考

17:30~ <懇親会>
会場:待兼山会館内 LIBRE
会費:4,000円程度の予定、当日申込み歓迎
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鉛筆 日本西洋古典学会シンポジウム "Our JASCA" 拝聴感想記

 6月1日に東大駒場キャンパスで開催された第64回日本西洋古典学会の主眼「パネルディスカッション "Our JASCA"」を、自分なりにまとめてみました。


・最初の話者である安西眞前教授は、配布した英語原稿を読み上げる形で話されました。「イリアス」におけるアキレウスの戦線復帰への拒否の態度を通して、日本人ならではの視点からの解釈の提示と、それが英・韓双方の古典学研究者によって共感を得た体験を通して、日本人ならでは、東アジア人ならではの視点から、古典学研究に貢献できることを述べました。

・続く高田康成教授は配布原稿なしでの朗読であったため、細かい部分の意味は取り損ねましたが、後に少々議論を巻き起こした氏の論点は、彼我(西洋対東洋)の古典の比較研究と言う視座の提示でした。

・続くケアンズ教授のコメントは、安西氏のコメントに対応しつつ、それを西欧人の目から補うものと私には映りました。また比較研究に対してもケアンズ教授は前向きな姿勢を示しておられました。

・最後のコメンテーターである韓国の安教授は、安西氏との出会いの体験を語りながら、東アジアで、大陸中国をも巻き込んだレベルで、政治レベルとは異なる知的国際交流が可能になることを熱意をもって説かれました。


 聴衆からも幾つか熱いコメントが上がっていましたが、私にとって心に残ったのは、二つのコメントでした。

 一つ目は、我々東アジア人が英語で書くということに関しては、英語圏の人々との間にハンディがあり過ぎるという指摘に対して、ケアンズ教授夫人で自らもラティニストであるイタリア人の方が、「我々南欧人も言語の点では全く同じ問題を抱えているので、JASCAのように、母語ではない言語で研究を発表しようとする動向は応援している」と述べられたことでした。
 自分としては、日本語や中国語や韓国語と英語との距離の方が、南欧語と英語との距離より遠いように思いますし、東アジア言語はギリシア語・ラテン語とは更に遠いのに対して、南欧語はややもすれば英語よりも西洋古典語に近い、という印象を抱いていました。しかし当事者の目にとっては、そうは感じられないのだな、というのがちょっと新たな視点でした。自分の感じ方が万国共通ではないのかもしれないと思わされました。

 心に残った二つ目は、歴史学からのコメントでした。歴史学では「KODAI」という欧文雑誌を二十数年前から十五号まで発刊しており、西洋古典学会がこの度行おうとしているのと同じことを既に行って来た実績があることは、西洋古代史を学んだ人間ならば誰でも知っていますが、そのことを改めて本シンポジウム参加者全体の共通認識としたこと、それから、高田氏の東西の古典の比較研究という提案に関しては、歴史学の立場からは受け入れ難いこと、という内容の指摘がなされました。
 つまり、歴史学は今まで、ギリシア・ローマを固有の地域として見て来たのであり、西欧のように「我々の古典」という自分たちのアイデンティティと結びつけて考えざるを得ない立場ではなかったこと、それにより生じたメリットは十分にあったこと、それを今更比較研究という座に持ち込むのはいかがなものであるか、という指摘でした。それに加えて、史料との取り組みに時間が掛る歴史学では、一人の人間が比較を行える程に二つの地域を研究するのは難しいし、意味がないこと、というのも史学の立場からすれば当然の指摘でした。
 西洋古典学会は哲学・史学・文学の三分野に加えて、美術史や宗教史の人間も広く含まれる分野であり、歴史学が持つ認識が必ずしも全ての分野の人に共有されるものではありません。逆に文学や哲学では、比較文学や比較哲学という形で、比較研究が成立し易いのではないかと思います。だからこそ、歴史学の立場の理解を訴えるコメントは重要だったと思います。

 私自身、歴史学と宗教学の中間に位置しつつ、狭義の宗教史学ではない研究をしているものとして、JASCAの可能性を追求して行こうとする方向性に全体的には賛意を覚えますが、歴史学の立場からのコメントも重要であると思えました。
 個人的には、英国に留学してそこで様々な葛藤を体験してきた身としては、今回のシンポジウムにおいては、特に目新しい刺激的な提案があるとは感じられませんでした。
 それでも、常々日本で上がっている国際的レベルで優れた業績が、英語で書かれていないゆえに国際的には無視されたままであるのは残念だと思っているので、日本人の業績を欧語で発表する場が存在することは喜びであり、かつ今後も存続し続けて欲しいという気持ちには、このシンポジウムを聴いた後にも変わりはありませんでした。
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お知らせ 日本西洋古典学会 6月1日・2日 東京大学(駒場)開催

第64回日本西洋古典学会が、本日6月1日と明日2日、東大駒場キャンパスで開催されます。
第64回西洋古典学会概要
プログラム

私が個人的に注目しているのは、
パネルディスカッション "Our JASCA"」です。

西欧に行くと、我々日本人がいくら日本語で優れた学術業績を挙げても
あちらの西洋古典学の研究者は

  「我々は日本語は読めないからね」

の一言で片づけてしまいます。

やはり、彼らが読む英独仏伊のどれかの言語を用いて記述しなければ読んで貰えません。
その可能性を開く西洋古典学の欧文雑誌 JASCA には、大いに期待しています。
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お知らせ 岩田靖夫先生・Ahn Jaewon教授講演会およびDouglas Cairns教授講演会

岩田靖夫先生・Ahn Jaewon教授講演会およびDouglas Cairns教授講演会


5月30日、午後4時15分から7時15分まで、東京大学駒場キャンパスにて
岩田靖夫先生とAhn Jaewon教授の講演会が開催されます。
以下にチラシがアップロードされています。

http://utcp.c.u-tokyo.ac.jp/events/2013/05/on_virtue/index_en.php

また5月31日、午後2時半から4時半まで、東京大学駒場キャンパスにて
Douglas Cairns教授の講演会が開催されます。
以下にチラシがアップロードされています。
http://utcp.c.u-tokyo.ac.jp/events/2013/05/douglas_cairns/index_en.php

自分は残念ながら参加できませんが、
西洋古典・古代哲学系で、ご興味のある方のために、アップしておきます。
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お知らせ 古代史の会5月定例会

古代史の会5月定例会は本日開催です。
ローマ宗教研究をする者にとって興味深い主題です。
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古代史の会5月定例会


日時:5月24日(金) 午後6:00より

場所:東京大学本郷キャンパス内
       山上会館 2階203会議室

報告:野村 嗣 氏

 「ノラのパウリヌスのCarminaにおける犠牲描写について(仮)」
 
報告者紹介:
千葉大学人文社会科学研究科博士後期課程所属。
ローマ末期のキリスト教と異教の混交を研究。
本発表では、ノラの司教パウリヌスの詩に詠まれた
異教的な慣習について、発表したいと思っております。

http://clsoc.sblo.jp/article/66576100.html
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お知らせ 久保正彰先生講演会

本日、西洋古典学関係で、
久保正彰先生の講演会が17時から本郷で行われます。
ご興味のある方はいらしてみて下さい。

http://clsoc.sblo.jp/article/65339294.html (リンク先に梗概あり)

東京大学大学院人文社会系研究科・文学部
布施学術基金公開講演会「東洋の文化」第21 回

「偶然と必然のたわむれ 洋学者の日本回帰」
講師 久保 正彰
日本学士院 院長(東京大学名誉教授)

日時:2013 年5 月23 日(木)17 時~18 時30 分
会場:東京大学文学部一番大教室 
   (東京大学本郷キャンパス 法文2 号館2 階)
来聴歓迎(無料)
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にっこり 新しい一歩

本日、博士号を頂きました。
やっと見習い(apprentice) を卒業した気持ちです。
これからますます厳しい世間の波に洗われることでしょうが、
研究者として、新しく生まれたつもりで、一歩一歩進んでゆきたいと思います。
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