2018年5月
細胞障害性抗がん薬の治験参加中に被留置者となった一例
臨床薬理
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- 巻
- 49
- 号
- 3
- 開始ページ
- 135
- 終了ページ
- 138
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 出版者・発行元
- (一社)日本臨床薬理学会
症例は66歳男性で、胃癌の診断で胃全摘出術を施行された。術後に内服の抗がん薬単剤で1年間の術後補助療法を開始したが、開始から約半年後に再発を認めた。術後補助療法中の再発であるために初回抗がん薬不応と判断され、治験の候補患者となった。スクリーニング結果により適格と判断され、無作為割付けにより被験薬群に割り当てられた。投与スケジュールは、外来で1週間毎に3回連続で点滴静注し1週休薬する3投1休で、Cycle 1 day 1(Cld1)の時点で有害事象は認めなかった。引き続き2回目投与のCld8の投与を実施したが、その投与3日後に逮捕され、警察署に留置された。警察は抗がん薬の治療をしていることを知り得たため、医事課に第一報の連絡を入れた。医事課は直ちに担当治験コーディネーター(CRC)を伝達し、CRCは速やかに責任医師、分担医師および依頼者と協議を開始した。治験の継続は費用的な観点から可能であるが安全性確保は難しく、さらに、状態を常時把握できないため治験データの品質保証に確信が持てない等結論に至り、治験責任医師は治験薬の投与継続を最終的に断念し、通常診察としての標準治療を開始した。
- ID情報
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- ISSN : 0388-1601
- 医中誌Web ID : S620210003