受賞

2015年9月

2015年度日本応用数理学会論文賞

一般財団法人 日本応用数理学会
  • 石谷 謙介
  • ,
  • 加藤 恭

タイトル
マーケットインパクトの非線形性,弾力性,不確実性及びそれらの執行戦略への影響について
受賞区分
国内外の国際的学術賞
受賞国・地域
日本

[受賞理由] 金融商品の大規模な売買取引が金融市場の取引価格形成へ与える影響はマーケットインパクトと呼ばれる。実際に発生した金融市場における取引価格の急激な下落の中にはマーケットインパクトが一因であると指摘されているものもあり、マーケットインパクトの解析やそれを考慮した最適な取引執行戦略の解明は、市場参加者の被る損失を抑制し、金融市場の混乱を引き起こさないために、学術および実務の両面から求められている。本論文では、マーケットインパクトによる取引価格の下落が小さくなるような、すなわち売却金額の期待値が最大となるような売却スピードを最適な執行戦略として求める問題を、確率制御問題の枠組みで定式化している。そして、マーケットインパクトの“執行量に対する非線形性”と“不確実性”、取引執行後の価格の回復効果を表す“弾力性”の3つのパラメータが最適執行戦略へ与える影響を数値的な検証によって明らかにしている。本論文を端緒として今後のマーケットインパクトの理論解析が展開すること、また、本論文の知見が実務における取引執行戦略の基礎となることが期待される。以上の理由により、論文賞委員会は本論文が論文賞(ノート部門)にふさわしいと判断した。