2012年3月
大学発ベンチャーと地域活性化
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- 担当範囲
- 93-117
- 出版者・発行元
- 京都大学学術出版会
我が国における大学発ベンチャー育成による地域経済活性化の諸政策は,なぜ行き詰まり状況に陥っているのであろうか. Kirihata(2010)は,日英米の3カ国の大学発ベンチャーに対する質問票調査をもとに,我が国の大学発ベンチャーは,事業計画策定にあたって外部資源から助言を受入れていない割合が英国の2倍以上に上る,経営人材獲得において個人的ネットワークが中心となっている,資金調達において自己資本,公的補助が中心となっている,大学への依存が高いこと等を明らにした上で,我が国の大学発ベンチャーは,英米と比較して,個人的ネットワーク,自己資本への高い依存等,外部資源の活用が十分ではない.また,大学への依存が高く,他の外部資源との連携が十分ではないと指摘している. 大学発ベンチャー経営の視点から見た場合,事業計画の作成にあたって,外部からの助言に消極的である,経営人材の獲得は,社長及び経営幹部の個人的ネットワークに大きく依存している,資金調達でも,自己資金,或いは,公的資金への依存が高いという状況は,我が国の大学発ベンチャーが,行き詰まりを見せているという事実からも,早急に対策が必要な経営上の課題ではないかと想定できる.一方,地域の視点で見た場合,大学発ベンチャーの育成に資する外部資源としては,Kirihata(2010)の指摘を見る限り,大学を除き,大学発ベンチャー,ハイテクスタートアップスの起業環境インフラは,それほど整備されていない状況が伺える. 大学発ベンチャー育成,さらには,大学発ベンチャー育成による地域経済活性化との論点は,学術面でも,実務面でも,解明すべき,又,取り組むべき課題は数多い.行き詰まりを見せる現状だからこそ,より長期的な視点での取り組みが必要となろう.
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