2006年1月
ナノテク・材料のビジネス戦略
- ,
- 担当範囲
- 11-17
- 出版者・発行元
- フジ・テクノシステム
ナノテクビジネスにおいては,資金,外部連携の課題解決に向けて「ポートフォリオ,マイルストン管理」「戦略的外部提携」「起業家精神」が有効であることを論じた。 こうした個々の企業におけるナノテクビジネス戦略の精緻化はもちろんだが,政府や経済界が期待するナノテク産業において我が国が主導的な役割を担うためには,クリントン演説の例を待つまでもなく,公的セクターの果たすべき役割は大きい。 最後に,ナノテク産業化に向けて求められる公的セクターの役割として,(1)公的資金の柔軟性向上,(2)異分野,異業種の連携促進の2点について指摘し,結びとかえる。 公的資金の柔軟性向上 資金面の問題は,米国では先端科学技術事業化の最重要課題と認識されている。このため1980年代以降,製品開発段階の資金ギャップ解消を目的に,ATP(Advanced Technology Program)やSBIR(Small Business Innovation Research)等の中小企業を対象とした研究開発支援制度が導入された。 しかし「公的資金が提供された企業に対し,当該事業以外の有望事業への資金転用を認めるべきである(Lerner(2000),p.91)」との指摘があるように,時間の経過と共に刻々と変化するビジネス環境に柔軟に対応しなければならない企業にとって,米国の現状の公的資金は柔軟性が欠けているとの課題が論じられている。こうした公的資金の柔軟性の欠如に関しては,我が国においても同様の状況が散見される。公的資金の柔軟性の向上は,ナノテク産業化促進の観点から、改善されるべき主要な課題の一つである。 異分野,異業種の連携促進 従来の企業の枠を超えて、異業種企業などに対する試作品等の提供機会を通じた新たなキラーアプリケーションの発掘が、ナノテクビジネスに取り組む企業のコンセンサスとなりつつある。ナノテクビジネスに関する先行研究でも,ナノテクの製品開発には,学際的,分野横断的な取組みが求められると指摘している(Bucher et al.(2003), Uldrich and Deb Newberry(2003)等)。 従来の学問,企業グループ,業界を越えた異分野,異業種との連携が,革新的な製品開発には欠かせない。公的セクターにおいては,異なる業界の企業が参加する研究開発プロジェクトを奨励優遇する,公的な研究施設の整備にあたっては異分野,異業種融合に資するものを優先する等の施策が求められる。
- リンク情報